SES・準委任エンジニアの法人化の目安|月単価60・70・80・90万円で個人事業主とひとり法人の手取りを試算(社保・均等割・税理士料込み、2026年)

SESエンジニアの法人化の目安は月単価いくら?
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📢 本記事は、ひとり合同会社の代表社員・ゴウが、国税庁・協会けんぽ・日本年金機構・東京都主税局・世田谷区の公表している令和8年度の税率・保険料率をもとに試算して書いています。内容は2026年11月時点のものです。試算は単身・40歳未満・東京23区・扶養なしという前提の概算で、実際の手取りは年齢・家族構成・自治体・経費・役員報酬の決め方で大きく変わります。法人化の判断は必ず税理士に試算してもらってください。一部にアフィリエイト広告(PR)を含みます。

「月単価70万円くらいなら法人にしたほうが得?」——SES・準委任で働くエンジニアが独立するとき、いちばん多い質問です。ネットには「年商1,000万円を超えたら法人化」のような目安が並びますが、社会保険料・税理士費用・均等割まで入れて、個人事業主とひとり法人の手取りを同じ条件で並べた数字は意外と見つかりません。

この記事では、月単価60・70・80・90万円の4パターンについて、個人事業主(青色申告・簡易課税)とひとり法人(役員報酬を固定・協会けんぽ・税理士あり)の手取りを令和8年度の料率で試算し、どの単価から法人が数字で有利になるのか、分岐を動かす変数は何かを整理します。最後に、法人化前に比較試算をしていなかった私のケースがどの行に当たるかも書きます。

ゴウ
ゴウ
正直に言うと、私は法人化を決めたときに個人事業主として受けた場合との比較試算をしていません。会社員のまま副業を法人に移し、退職後にそのまま法人でSES案件を受けました。単価の目安は月70万円+消費税。役員報酬の60万円は税理士の試算表で決めました。この記事の試算は、当時の自分に見せたかった表です。

結論:月単価60〜90万円は「個人事業主のほうが手元に残る」

月単価(税別)個人事業主の可処分所得ひとり法人(役員報酬50万円)個人の手取り+会社に残る額差(法人 − 個人)
60万円(年商720万円)502.5万円428.3万円(会社は赤字)−74.2万円
70万円(年商840万円)579.9万円533.5万円−46.4万円
80万円(年商960万円)658.6万円631.3万円−27.3万円
90万円(年商1,080万円)741.7万円729.1万円−12.6万円
(参考)100万円(年商1,200万円)819.7万円825.2万円+5.4万円

2026年(令和8年分・令和8年度料率)、単身・40歳未満・東京23区・扶養なし・経費年60万円・簡易課税第5種。法人は税理士年40万円+バーチャルオフィス年2万円を追加。「会社に残る額」は法人税等を払った後の留保で、配当や退職金で取り出すときに再び課税されます。

約100万円
「合計」で並ぶ月単価の目安
役員報酬50万円固定の場合。60万円なら110万円、70万円なら120万円
49万円/年
法人だけにかかる固定費
税理士40万+均等割7万+バーチャルオフィス2万。売上ゼロでもかかる
約1.6倍
社会保険料の差(単価70万円)
国民年金+国保 約104万円 vs 協会けんぽ 本人+会社 約172万円(報酬50万円)

数字だけで見ると、月単価60〜90万円の範囲では1年目の手元に残るお金は個人事業主のほうが多い。法人が「合計」で並ぶのは月単価100万円前後(年商1,200万円)です。この帯で法人化するなら、「今年の手取りを増やすため」ではなく、社会保険の給付・将来の退職金・法人契約と法人口座の信用・共済や経費の幅を買う判断になります。

試算の前提

区分前提
人物単身・40歳未満(介護保険料なし)・東京23区在住・扶養なし・他の所得なし
年2026年(令和8年分の所得税、令和8年度の社会保険料率・住民税率)。住民税は翌年度課税だが同年の負担として計上
売上月単価60・70・80・90万円(税別)×12か月。精算幅・稼働の変動・賞与は考慮しない。単価は個人でも法人でも同じ(私の実感どおり)
消費税インボイス登録済み・簡易課税第5種(サービス業、みなし仕入率50%)。受け取った消費税10%のうち5%を納付し、残る5%は所得に含める
共通の経費年60万円(PC・通信・会計ソフト・書籍など)
個人事業主青色申告特別控除65万円。国民年金(月17,920円)+国民健康保険(世田谷区の令和8年度料率)。所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ
ひとり法人役員報酬は期首に固定(最適化しない)。会社の追加コスト:税理士 年40万円(顧問2万円×12+決算16万円)+バーチャルオフィス 年2万円。協会けんぽ東京(本人・会社折半)+子ども・子育て拠出金。法人税15%/23.2%、地方法人税、法人住民税(均等割7万円+法人税割)、法人事業税+特別法人事業税。税引後利益は会社に留保
手取りの定義個人事業主=売上+簡易課税の差益−経費−国民年金−国保−所得税−住民税。法人=(役員報酬−社保本人負担−所得税−住民税)+(会社の税引後留保)。留保は生活費に使えないので「個人の手取りだけ」の列も示す
入れていないもの小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済(個人・法人とも使える)、精算幅、配当・退職金、欠損金の繰越、設立費用、1期目の免税期間

出典:協会けんぽ「令和8年度 都道府県単位保険料率」、日本年金機構「国民年金保険料」、世田谷区「国民健康保険料の計算方法(令和8年度)」、東京都主税局「法人都民税」、同「法人事業税の税率」

個人事業主の手取り(月単価60〜90万円)

月単価年商事業所得(差益込み・経費・青色65万後)国民年金国保所得税住民税可処分所得月あたり
60万円720万円631万円21.5万円68.9万円53.0万円50.0万円502.5万円41.9万円
70万円840万円757万円21.5万円82.2万円77.1万円61.3万円579.9万円48.3万円
80万円960万円883万円21.5万円94.7万円100.5万円72.6万円658.6万円54.9万円
90万円1,080万円1,009万円21.5万円95.8万円129.9万円85.1万円741.7万円61.8万円

国保は所得割(医療分7.51%+支援金分2.80%+子ども・子育て支援金分0.27%)+均等割で、上限は合計96万円(月単価90万円で到達)。

個人事業主側で押さえる3点
  • 国保は所得に比例して年69〜96万円になる。所得割が約10.6%なので、所得税・住民税と合わせた限界負担率は40%を超える帯がある
  • 青色申告特別控除65万円は法人にはない個人の強み(e-Taxまたは電子帳簿が条件)
  • 消費税は、個人は令和8年分で2割特例が終わり、令和9・10年分は3割特例(個人事業者のみ、法人は対象外)。この表は簡易課税第5種で計算(2割特例はいつまで)

ひとり法人の手取り(役員報酬40〜70万円のパターン)

月単価役員報酬社保 本人社保 会社所得税住民税個人の手取り法人の所得法人税等会社に残る額個人+会社対個人事業主
60万円40万円69.871.68.523.0378.8102.429.972.5451.2−51.3
60万円50万円85.187.315.231.0468.6−33.37.0−40.3428.3−74.2
70万円40万円69.871.68.523.0378.8228.458.1170.3549.0−30.9
70万円50万円85.187.315.231.0468.692.727.864.9533.5−46.4
70万円60万円100.5103.032.039.7547.8−43.07.0−50.0497.8−82.1
80万円50万円85.187.315.231.0468.6218.756.0162.7631.3−27.3
80万円60万円100.5103.032.039.7547.883.025.657.4605.3−53.3
80万円70万円114.3117.151.249.1625.4−51.17.0−58.1567.2−91.4
90万円50万円85.187.315.231.0468.6344.784.2260.5729.1−12.6
90万円60万円100.5103.032.039.7547.8209.053.8155.2703.0−38.6
90万円70万円114.3117.151.249.1625.474.923.751.1676.5−65.2

単位:万円/年。法人の所得がマイナスの行は、役員報酬が売上に対して高すぎて会社が赤字になる設定。赤字でも均等割7万円はかかる。

社会保険料が「本人+会社」で2回かかる

🧑 個人事業主(単価70万円)
国民年金 21.5万円
国民健康保険 82.2万円
合計 約104万円
国保は所得が増えると上がるが、上限96万円で頭打ち
🏢 ひとり法人(役員報酬50万円)
本人負担 85.1万円(健保9.85%+支援金0.23%、厚生年金18.3%の半分)
会社負担 87.3万円(+子ども・子育て拠出金)
合計 約172万円
一人社長は会社負担分も実質自分のお金

差は年60〜70万円。これが法人化で手取りが減る最大の理由です。代わりに得られるのは、厚生年金(老後の年金の上乗せ)・傷病手当金・出産手当金・扶養家族を保険料なしで入れられる仕組み。給付の中身はひとり社長の社会保険料で。

法人税等の実効率は約21%+均等割7万円

月単価・役員報酬法人の所得法人税地方法人税都民税 法人税割均等割事業税特別法人事業税合計実効負担率
70万円・40万円228.434.33.52.47.08.03.058.125.5%
80万円・50万円218.732.83.42.37.07.72.856.025.6%
90万円・50万円344.751.75.33.67.012.14.584.224.4%

単位:万円。所得400万円以下の税率部分は約21.4%(法人税15%+地方法人税1.55%+法人税割1.05%+事業税3.5%+特別法人事業税1.3%)。所得が小さいほど均等割7万円の重みで実効率が上がる(均等割)。

役員報酬を上げると法人のメリットが消える

同じ月単価70万円でも、役員報酬を40万円→60万円にすると「個人+会社」の合計は549万円→498万円と約51万円減ります。報酬を上げるほど社保の会社負担が増え、会社が赤字になり、個人側の税率も上がるからです。「売上の大半を役員報酬にして会社をトントンにする」設定は、法人の税率の低さを使えません。一方で報酬を下げすぎると生活費が足りない。役員報酬の設定が、法人化の損得を決める最大の変数です(役員報酬の決め方、役員報酬の試算例)。

損益分岐:どの単価から法人が有利になるか

月単価個人事業主法人(報酬50万円)差法人(報酬60万円)差法人(報酬70万円)差
80万円658.6631.3−27.3605.3−53.3567.2−91.4
90万円741.7729.1−12.6703.0−38.6676.5−65.2
100万円819.7825.2+5.4800.8−18.9774.3−45.5
110万円890.7919.8+29.2897.1+6.4872.1−18.6
120万円961.61,014.5+52.9991.8+30.2968.6+6.9

単位:万円/年。「個人+会社に残る額」で比較。

法人が数字で有利になる条件
📈
単価100万円前後
役員報酬50万円固定なら年商1,200万円あたりで合計が並ぶ
›
🧾
国保の上限に到達
所得約940万円で国保が96万円で頭打ち。これより上は個人側の社保が増えない
›
📊
所得税率33%帯へ
課税所得900万円超(単価110万円前後)で個人の税率が上がり、法人の約21%との差が開く
›
💼
報酬を抑えて留保
役員報酬を売上の半分程度に抑え、残りを会社の税率で持つ
分岐を動かす3つの変数
  • 税理士費用:年40万円で計算。決算だけ依頼して20万円台に抑えられれば、分岐は単価10万円ぶん手前に動く。逆に顧問料が高ければ後ろに(税理士の顧問料の相場と年間維持費)
  • 役員報酬の額:50万円→60万円で分岐が単価10万円ぶん後ろに動く
  • 国保の上限:自治体で異なる。上限が低い自治体ほど個人事業主が有利な帯が広がる

「個人の手取りだけ」で比べると、法人はどの単価でも個人事業主を下回ります(報酬50万円なら手取り約469万円で固定)。法人のメリットは会社に残る分と、その取り出し方(退職金・配当)、社会保険の給付にあって、今年の手取りではありません。

数字に出ないメリット・デメリット

観点個人事業主ひとり法人
社会保険の給付国民年金のみ。傷病手当金なし厚生年金の上乗せ、傷病手当金・出産手当金、扶養家族を保険料なしで
共済・iDeCo小規模企業共済・iDeCo・経営セーフティ共済とも加入可同じく加入可。効果はほぼ同じ(小規模企業共済、iDeCo)
退職金退職金の仕組みがない(共済が代替)役員退職金を会社から出せる。退職所得は税制上の優遇が大きい
取引エージェント経由は個人でも問題なし法人契約・法人口座・インボイス番号。上場企業の業務請負など法人でないと契約できない相手がある(エージェント案件を法人で受ける手順)
経費の幅家事按分が中心役員社宅・出張日当・生命保険など法人特有の経費(使うかは別)
手間確定申告1回決算・法人税申告、社保の手続き、役員報酬の給与計算、源泉所得税の納付(源泉所得税の納付)
やめるとき廃業届解散・清算に費用と手間。休眠という選択肢(合同会社のデメリット)
会社員のまま始める開業届で可会社員のまま法人を作ると社保は二以上事業所勤務(二以上事業所勤務届)

私の場合:試算せずに法人にした

ゴウ
ゴウ
私は会社員時代に副業を法人に移し、退職後にそのまま法人でSES案件を受けたので、「個人事業主として受けたらいくらか」を計算した上で法人を選んだわけではありません。単価の目安は月70万円+消費税、役員報酬は税理士の試算表で60万円。この記事の表で言えば「70万円・60万円」の行に近い設定です。

表を見れば分かるとおり、この設定は「手取りを最大化する法人化」ではありません。私にとっての法人のメリットは、大きな会社と契約できること、お金の管理がはっきりすること、共済などの制度でした(独立の経緯、3期分の決算)。実際には受託の売上や精算幅があり、消費税も2割特例から簡易課税に移っているので、表の数字そのままではありません。

これから法人化を考える人には、この表を税理士に見せて「自分の単価・家族構成・自治体ならどうなるか」を試算してもらうことをすすめます。私も今は、毎年の役員報酬と配当の額を税理士の試算で決めています(税理士に頼む範囲)。

法人化を判断する4ステップ

STEP1
単価と年商を置く
月単価×12。精算幅の上振れ・下振れは別に見る。90万円未満なら「数字では個人が有利」から出発する
STEP2
役員報酬をいくらにするか決める
生活費に必要な額と、会社に残したい額のバランス。報酬を上げるほど法人のメリットは消える
STEP3
法人の固定費を見積もる
税理士(顧問か決算のみか)・均等割7万円・バーチャルオフィス・会計ソフト。合計49万円が目安(年間維持費)
STEP4
数字以外の理由を言葉にする
法人契約が必要な取引先があるか、社保の給付や退職金をどう考えるか、家族を扶養に入れるか。数字で負けていても、ここに理由があれば法人化は合理的(個人事業主と法人の違い、正社員・フリーランス・ひとり法人の比較)

よくある質問

Q. 月単価70万円で法人化すると、どのくらい手取りが減りますか?
A. この記事の前提(単身・40歳未満・東京・役員報酬50万円・税理士40万円)では、個人事業主より年46万円ほど少なくなります。役員報酬を60万円にすると差は82万円に広がります。家族を扶養に入れる場合や税理士費用を抑えられる場合は差が縮みます。
Q. 年商1,000万円を超えたら法人化、という目安は正しいですか?
A. 消費税の課税事業者になるラインとしては意味がありましたが、インボイス登録が前提のSES・準委任では個人でも法人でも消費税を納めるので、この目安はあまり効きません。手取りの損益分岐はこの試算では年商1,200万円前後(役員報酬50万円固定)でした。
Q. 40歳以上だと結果は変わりますか?
A. 介護保険料が加わります。個人事業主は国保の介護分(所得割2.43%+均等割)、法人は協会けんぽの介護保険料率1.62%(折半)。どちらも増えるので、差の方向は大きく変わりません。
Q. 配偶者を扶養に入れたい場合は?
A. 法人(協会けんぽ)は被扶養者を入れても保険料が増えません。国保は家族の人数分の均等割がかかります。扶養家族が多いほど法人が有利になりやすいので、この試算より差が縮みます。家族に給料を出す形は別記事で(妻(家族)に給料を出す)。
Q. 会社に残したお金はどう取り出すのですか?
A. 役員報酬の増額、利益の配当、役員退職金のいずれかです。取り出すときに個人側で課税されるので、「会社に残る額」はそのまま手取りではありません。配当の仕組みは別記事にまとめています(利益の配当)。

まとめ

月単価60〜90万円のSES・準委任エンジニアは、2026年の数字では個人事業主のほうが年12〜74万円多く手元に残ります。法人が合計で並ぶのは月単価100万円前後、役員報酬を50万円程度に抑えて会社に残せる場合です。それでも法人を選ぶなら、理由は手取りではなく、社会保険の給付・退職金・法人契約の信用・お金の管理。私はその理由で法人を続けていますが、これから選ぶ人は、この表を税理士に見せて自分の条件で試算してもらってください。

📝 この記事のまとめ
  • 単価60/70/80/90万円で、個人事業主の可処分所得は502/580/659/742万円。法人(報酬50万円)の個人+会社は428/534/631/729万円
  • 法人が不利な主因は、固定費49万円(税理士40・均等割7・VO 2)と、社保が国民年金+国保の約1.6倍になること
  • 法人税等の実効率は約21%+均等割。個人の限界負担率(所得税20〜23%+住民税10%+国保約10.6%)より低いが、売上が小さいと固定費を埋められない
  • 役員報酬を上げるほど法人のメリットは消える。「会社をトントンにする報酬」は税率の差を使えない
  • 合計で並ぶのは月単価100万円前後(報酬50万円)、110万円(60万円)、120万円(70万円)。分岐は税理士費用・役員報酬・国保の上限で動く
  • 法人の価値は数字の外(社保の給付・退職金・法人契約・扶養)。私は試算せずに法人にしたが、これから選ぶ人は税理士に試算を
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副業から合同会社を設立して4年目のひとり社長/エンジニア
本業を持ちながら副業(口コミサイトと受託開発)を12年育て、本業と並行して合同会社を設立。その後、法人に一本化しました。いまはSESを本業に、自社Webサービスと口コミサイトを運営しています。立ち上げ前に自分が不安だったこと・迷ったことを、実際にどうだったかと一緒に書いています。
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