正社員かフリーランスか、それともひとり法人か|3つ全部やったエンジニアが手取り・社保・リスクで比較する
エンジニアの働き方は、大きく「正社員」「フリーランス(個人事業)」「ひとり法人」の3つに分かれます。私はこの3つを全部やりました。会社員として9年、知人の会社の役員として7年、その裏で副業を12年半、そして今は自分の合同会社でSESを本業にしています。結論から言うと、どれが正解かは人によって違いますが、「どれか一つを一生続ける」前提で選ぶ必要はない、というのが私の答えです。

3つの働き方をざっくり比較
| 正社員 | フリーランス(個人事業) | ひとり法人 | |
|---|---|---|---|
| 収入の決まり方 | 給与(会社が決める) | 単価×稼働(自分で決める) | 単価×稼働 → 役員報酬は自分で決める |
| 収入の上限 | 会社の給与テーブル | 自分の単価と稼働時間 | 同左+会社に利益を残せる |
| 社会保険 | 会社が半分負担 | 国民健康保険+国民年金(全額自己負担) | 自分の会社で加入(会社負担分も実質自分) |
| 税金 | 給与所得控除・年末調整 | 事業所得(青色65万控除) | 法人税+役員報酬に所得税 |
| 信用(融資・賃貸・カード) | 高い | 低め | 法人の実績次第。創業融資は使いやすい |
| 仕事がない時 | 給与は出る | 収入ゼロ | 収入ゼロ(役員報酬は固定で出ていく) |
| 事務の手間 | ほぼなし | 確定申告 | 決算・申告・社保・給与計算(税理士に依頼が現実的) |
| 向いている人 | 安定と組織で働きたい人 | まず一人で稼ぐ経験を積みたい人 | 売上が安定し、年数百万円以上の利益が見える人 |
手取りはどう変わるか(同じ売上・給与でざっくり)
エンジニアの月単価が同じでも、立場によって手元に残る額は変わります。ここでは細かい数字より、構造の違いを見てください。
給与+社保会社負担+会社の取り分
→ 国保・年金・所得税を自分で払う
→ 役員報酬+社保+法人税、残りは会社に
- 「フリーランスは手取りが多い」→ 国保・国民年金・所得税を引くと、給与額面の1.3〜1.5倍の売上がないと正社員と同じ手取りにならない
- 「法人化すれば節税できる」→ 利益が小さいうちは均等割・税理士費用のほうが大きい。目安は年300万円超の利益
- 「正社員は安全」→ 会社が傾けば給与も止まる。私の本業だった会社は最終的に倒産した
年収600万円クラスの手取りの試算表(正社員/フリーランス/ひとり法人)
構造だけだと分かりにくいので、年600万円分の仕事を3つの立場で受けたときの手元に残る額を、一般的な計算で並べます。前提は単身・40歳未満・東京・2026年(令和8年分)の税制と協会けんぽの料率です。
| 項目 | 🏢 正社員 年収600万円 | 🧑💻 フリーランス(個人) 売上600万・経費60万・青色 | 🏠 ひとり法人 売上600万・経費60万・役員報酬420万 |
|---|---|---|---|
| 社会保険料(本人負担) | 約88万円 健保・厚年の半分+雇用保険 | 約80万円 国保 約58万+国民年金 約21.5万 | 約61万円 健保・厚年の半分(会社負担が別に約61万) |
| 所得税 | 約15万円 | 約20万円 | 約6.5万円 |
| 住民税 | 約31万円 | 約36万円 | 約19万円 |
| 法人側の税金 | — | — | 約20万円 利益 約59万の法人税等+均等割7万 |
| 手元に残る額 | 約466万円 | 約404万円 | 約371万円 個人 約333万+会社に残る 約38万 |
| このほかに | 退職金・有給・会社負担の社保(上の数字の外) | 消費税(インボイス登録なら2割特例で約11万)、業種により個人事業税 | 会社に残った分は翌期以降の報酬や経費に回せる。厚生年金分だけ将来の年金が増える |
※ 一般的な計算式による試算(給与所得控除・基礎控除は令和8年分、社保は協会けんぽ東京の令和8年度料率、国保は東京23区の目安、法人税等は実効税率の目安)。iDeCo・小規模企業共済・生命保険料控除などは入れていません。実額は所得・自治体・契約で変わるので、税理士やシミュレーターで確認してください。
同じ600万円でも、正社員は会社が社保の半分を払ってくれる分が大きく、フリーランスは国保と国民年金を全額自分で払い、ひとり法人は会社負担分まで自分の売上から出す構造です。法人が不利に見えますが、役員報酬の額で社保と税金のバランスを動かせること、会社に残した分を翌期に使えること、売上が増えたときの税率の伸びが緩やかなことが法人の強みで、個人事業主と法人の違いにまとめています。
私が3つ全部やって思うこと
法律事務所向けの基幹システムの保守・改修で、顧客対応から運用まで一通り。ここで身につけたものが、その後の受託もSESも全部支えている
口コミサイトの広告収入から始めて、受託開発へ。正社員の給与があるから、失敗しても困らない状態で試せた
人事・総務・経理の整備、採用、社内ルール。合同会社を作ったときに、この経験がそのまま効いた
本業の会社が倒産に向かう中、副業を法人に移して独立。SESを柱に、自社サービスと口コミサイトを続けている

どれを選ぶかの判断軸
✅ 組織・チームで働くのが合っている
✅ 住宅ローン・賃貸など信用が必要な時期
⚠️ ただし副業で「一人で稼ぐ」練習はしておく
✅ 単価×稼働で年収が読める
✅ まずは個人事業で実績を作りたい
⚠️ 仕事がない月のリスクを自分で持てる
✅ 取引先に法人を求められる
✅ 役員報酬・共済・融資など法人の仕組みを使いたい
⚠️ 決算・社保の事務を引き受けられる
副業OKで年収も上げたい、という人は、独立より先に「会社を変える」ほうが近道なことがあります。TechGoはITエンジニア向けのハイクラス転職エージェントで、無料面談から始められます。副業可否は面談の場で最初に確認しておくのがおすすめです。
フルリモート案件が9割以上で、週1日〜の案件もあります。
クラウドワークス テックで案件を見る(登録無料) ›正社員のまま副業する、という「4つ目の選択肢」
実は、いちばん失敗しにくいのはこの4つ目です。正社員の給与と社会保険を持ったまま、副業で「一人で稼ぐ」を試す。うまくいけば法人にして独立できるし、うまくいかなくても給与がある。私の12年半はまさにこれで、会社に伝わる経路や法人化の落とし穴さえ押さえておけば、リスクはかなり小さいです。
- 就業規則の副業・兼業の規定を確認する(禁止なら副業OKの会社への転職も選択肢)
- クラウドソーシングや副業マッチングで、小さい案件から実績を作る(エンジニアなら、週1日〜の副業案件もあるクラウドワークス テック
も) - 売上・経費を最初から記録する(あとで法人口座や融資の審査で効く)
- 利益が年300万円を超え、継続案件が見えたら法人化を検討する
まとめ
- 正社員・フリーランス・ひとり法人は、収入の決まり方・社保・信用・事務の手間がそれぞれ違う
- フリーランスは売上が給与の1.3〜1.5倍ないと手取りで正社員に並ばない。法人は利益年300万円超が目安
- 正社員は「安全」ではない。会社が倒れれば給与も止まる
- いちばん失敗しにくいのは「正社員のまま副業で一人で稼ぐ練習をして、伸びたら法人にする」順番

