個人事業主と法人(合同会社)の違い|税金・社会保険・信用・手間を一覧で比較、副業から直接法人にした私の判断
結論から書きます。個人事業主と法人のいちばん大きな違いは、「事業の持ち主が自分個人か、自分とは別の人格(会社)か」です。この違いから、税金のかかり方、社会保険、取引先からの見え方、毎年の手間、やめるときの手続きまで、ほぼすべてが変わります。
この記事では、個人事業主と法人(合同会社)の違いを一覧表で比べ、税率は国税庁の表で確認した数字で並べます。後半では向き不向きのチェックと、法人成りの流れも図にしました。私は開業届を出さず、副業(雑所得)からいきなり合同会社を作ったので、その判断もあわせて書きます。

そもそも「個人事業主は法人」ですか?
いいえ、個人事業主は法人ではありません。個人事業主は、会社を作らずに個人として事業をしている人のことです。屋号を付けていても、事業の持ち主は個人のままです。
一方の法人は、法律で「人」として扱われる団体です。株式会社や合同会社は、登記をすることで成立し、社長とは別に、会社の名前で契約したり、口座を持ったり、税金を払ったりします。ひとりで作った会社でも、社長個人と会社は別の存在です。
📝 もうけ=自分の所得(所得税)
📝 始め方:税務署に開業届
📝 屋号があっても「個人」
✅ もうけ=会社の所得(法人税)
✅ 始め方:法務局で設立登記
✅ 社長は会社から役員報酬を受け取る
この「別の人」という点が、このあと出てくる違いのもとになっています。たとえば法人では、社長も会社から給料(役員報酬)をもらう立場になるので、社長個人にも給与としての税金と社会保険がかかります。
個人事業主と法人の違い一覧
まずは全体像です。ひとりで事業をする前提で、個人事業主と合同会社を比べました。
| 項目 | 個人事業主 | 法人(合同会社) |
|---|---|---|
| 始める手続き | 税務署に開業届を出す | 定款を作り、法務局で設立登記をする |
| 始める費用 | 開業届の提出に手数料はかからない | 登録免許税が最低6万円(株式会社は最低15万円+定款認証) |
| もうけにかかる税金 | 所得税(5〜45%の累進)+住民税(所得割10%)など | 法人税(中小法人は年800万円以下15%、超える部分23.2%)+地方法人税・法人住民税・法人事業税 |
| 赤字のとき | 所得税はかからない。損失は青色申告なら3年繰り越せる | 赤字でも法人住民税の均等割がかかる(東京23区・資本金等1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円)。欠損金は10年繰り越せる |
| 社会保険 | 本人は国民健康保険+国民年金(令和8年度は月17,920円) | 社長ひとりでも健康保険・厚生年金の強制適用事業所。保険料は会社と本人で負担 |
| 自分への給料 | なし(もうけ全体が自分の所得) | 役員報酬として受け取る。原則、毎月同額(定期同額給与)で、改定は期首から3か月以内など |
| 経費の考え方 | 事業に必要な支出。家事と共用のものは按分。自分への給料は経費にならない。家族への給与は青色事業専従者給与(届出が必要) | 事業に必要な支出に加え、社長の役員報酬も会社の経費になる(定期同額給与などの要件あり) |
| 信用・口座・取引 | 個人名(屋号)で取引。取引先によっては法人のみ契約という場合もある | 会社名で契約・法人口座を持てる。登記簿で会社の情報を誰でも確認できる |
| 会計・申告の手間 | 年1回の確定申告。自分で申告する人も多い | 決算書の作成と法人税などの申告。給与の源泉徴収や社会保険の手続きもある。税理士に頼む人が多い |
| やめるとき | 税務署に廃業の届出を出す | 解散・清算の登記など、会社法の手続きが必要。費用も時間もかかる |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2260(所得税の税率)・No.5759(法人税の税率)・No.2070(青色申告)・No.5762(欠損金の繰越控除)・No.5211(役員給与)・No.7191(登録免許税)、総務省「個人住民税」、東京都主税局「法人都民税 均等割の税率表」、日本年金機構「適用事業所と被保険者」「国民年金保険料」(2026年10月時点)。
ざっくり言うと、個人事業主は「始めるのもやめるのも軽い。ただし、もうけが増えると税率も上がる」、法人は「始めるにもやめるにもお金と手間がかかる。そのかわり、もうけが増えたときの調整がしやすい」という関係です。
私の場合、法人にしてからは、税理士に月2万円弱の顧問料を払い、3か月に1回の面談をしています。日々の領収書や請求書は、毎月自分でfreeeに登録し、税理士が確認する分担です。法人の決算は初めてだったので、税理士に言われるとおりに対応しています。
税金の違い|所得税の累進と法人税の税率を比べる
「法人のほうが税金が安い」とよく言われますが、正確には税率の決まり方が違うのです。個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。法人税は、中小法人なら所得が年800万円までは15%、それを超える部分は23.2%と、段階が2つしかありません。
| 課税される所得 | 所得税の税率(個人) | 法人税の税率(中小法人) |
|---|---|---|
| 195万円未満 | 5% | 15% (年800万円以下の部分) |
| 195万〜330万円未満 | 10% | |
| 330万〜695万円未満 | 20% | |
| 695万〜900万円未満 | 23% | |
| 900万〜1,800万円未満 | 33% | 23.2% (年800万円を超える部分) |
| 1,800万〜4,000万円未満 | 40% | |
| 4,000万円以上 | 45% |
出典:国税庁 タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」・No.5759「法人税の税率」(令和8年4月1日現在の法令等、2026年10月時点で確認)。所得税は超える部分にだけその税率がかかる超過累進税率。個人はこのほかに住民税の所得割(標準10%)・復興特別所得税など、法人はこのほかに地方法人税・法人住民税・法人事業税がかかります。法人税の15%は所得金額が年10億円以下の中小法人の場合(10億円超の事業年度は17%)。この15%は租税特別措置法の特例(本来は19%)で、現在は2027年3月31日までに開始する事業年度が対象です。2027年4月以後も続くかは、令和9年度税制改正で決まります(経済産業省が2年延長を要望中。財務省「令和9年度税制改正要望」)。
表だけを見ると「所得が多いほど法人が有利」に見えます。ただ、実際の比較はもう少し複雑です。法人にすると、もうけを「社長の役員報酬」と「会社に残る利益」に分けられるからです。
役員報酬を受け取る社長個人には、会社員と同じ給与所得控除が使えます(給与の額に応じて決まり、上限は195万円)。一方で、役員報酬には社会保険料もかかります。どこが損益の分かれ目になるかは、売上・経費・家族構成・社会保険料で変わるので、一概には言えません。試算の考え方はマイクロ法人と個人事業の二刀流の記事でも触れています。
私の役員報酬は、会社員だった間は月15万円、退職後の2期目の初めから月60万円です。金額は税理士と試算して決めました。このように、報酬と会社の利益の配分を決められるのが、個人事業主との大きな違いです。
- 法人住民税の均等割は、利益がなくても毎年かかります(東京23区・資本金等1,000万円以下・従業者50人以下で年7万円。1年未満は月割)。
- 役員報酬を払うなら、社会保険料も毎月かかります。
- 私の1期目は7か月で小さな赤字でしたが、均等割の月割分は払いました。2期目からは黒字で、1期目の繰越欠損があったので法人税等は少額でした。
社会保険の違い|社長ひとりでも厚生年金に入る
日本年金機構によると、法人の事業所は「事業主のみの場合を含む」常時従業員を使用していれば、健康保険・厚生年金の強制適用事業所です。社長ひとりの会社でも、役員報酬を払えば社会保険に入ることになります。個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員がいる一定の業種が強制適用で、個人事業主本人は国民健康保険と国民年金に入ります。
📝 国民年金(令和8年度は月17,920円)
📝 保険料は全額自分で負担
✅ 厚生年金
⚠️ 保険料は会社と本人で負担(合計では会社のお金から出る)
私は会社員のまま法人を作ったので、1期目は本業の会社と自分の会社の両方から給与が出ている状態でした。このときは年金事務所で「二以上事業所勤務届」の手続きをしています。本業の会社には何も依頼していません。詳しくは二以上事業所勤務届の手続きにまとめました。
あなたはどっち向き?チェックリスト
どちらが正解かは人によって違います。次の表で、当てはまる項目が多いほうを目安にしてみてください。
| 見るところ | 個人事業主が向いている | 法人が向いている |
|---|---|---|
| もうけの大きさ | まだ小さい・変動が大きい | 安定して大きくなってきた |
| 続ける見込み | お試し・いつやめるか分からない | 長く続けるつもり |
| 取引先 | 個人相手・個人でも契約できる | 法人としか契約しない会社と取引したい |
| 手間とコスト | 事務作業と固定費を最小にしたい | 税理士費用や均等割を払っても見合う |
| お金の分け方 | 生活と事業をざっくり管理したい | 会社と個人のお金をはっきり分けたい |
| 働き方 | 会社員の副業として小さく続ける | 独立して事業を本業にする予定がある |
※目安です。税額や社会保険料の具体的な試算は顧問税理士に相談してください。
会社員・フリーランス・ひとり法人の3つの働き方を比べた正社員vsフリーランスvsひとり法人もあわせて読むと、自分の位置が分かりやすくなります。合同会社と株式会社のどちらにするかは合同会社vs株式会社で比べています。私は費用が安いという理由で合同会社を選びました。
個人事業主から法人化(法人成り)の流れ
個人事業主が会社を作り、事業を会社に移すことを「法人成り」といいます。大まかな流れは次のとおりです。
会社の形(合同会社か株式会社か)、商号、本店所在地、事業目的、資本金、決算月を決めます。
合同会社の定款は公証人の認証が要りません。登録免許税は最低6万円です。会社は登記によって成立します。
法人設立の届出、青色申告の承認申請、給与支払事務所の届出、社会保険の新規適用など。期限があるものが多いので、税理士と一緒に確認します。
請求書の発行元、入金口座、各種サービスの契約者を会社に変えていきます。
個人事業主だった人は、税務署に廃業の届出を出し、その年の個人事業分を確定申告します。事業用の資産を会社に移す場合の扱いは税理士に確認します。
設立の手順と費用は合同会社の設立手順と費用で、私が実際にたどった流れごと書いています。私は弥生の「かんたん会社設立」を使い、電子定款は無料で作成、電子署名は提携の行政書士に代行してもらい、登記の申請は自分で法務局に出しました。
私は弥生のかんたん会社設立で作りました。マネーフォワードも同じ流れで無料で使えます。freee会社設立は公式サイトからどうぞ。
会計ソフトや法人カードなど、指定のサービスを導入することを条件に、設立登記の費用負担を抑えられるサービスです。対象サービスと条件は公式サイトで確認してください。
私が個人事業を経由せず、副業から直接法人にした判断
一般的な順番は「副業 → 個人事業主 → 法人成り」です。私はこの真ん中を飛ばして、副業の雑所得から直接、合同会社を作りました。
副業の収入は、2021年から2022年にかけて約3倍に増えていました。会社員の空き時間はほぼ副業に使っていました。収入が安定したのは、副業マッチングサービス経由で、一定量の仕事をもらえる会社と継続して契約してからです。副業の売上の推移と、法人化を考えたタイミングは副業の売上推移と法人化で詳しく書いています。

そこから開業届ではなく合同会社を選んだのは、もともと法人への憧れのようなものがあったこと、取引のときに法人のほうが有利なこと、そして税金の面です。
開業届を出していなかったので、法人成りのSTEP5にあたる個人事業の廃業の届出や、個人から会社への事業用資産の引き継ぎはありませんでした。副業の確定申告は雑所得でしていて、会社を作ったあとは5月から副業の売上を法人に入れるようにしています。
ただ、ふり返ると、登記・口座開設・税理士との契約・社会保険の手続きを、難しく考えすぎていたと思います。実際には、不完全でもまず窓口や専門家に連絡すれば、相談に乗ってもらえました。設立前に気をつけたい点は設立前の3つの罠にまとめています。

よくある質問
まとめ
個人事業主と法人の違いは、事業の持ち主が「自分個人」か「別の人格の会社」かという点から始まります。個人事業主は始めるのもやめるのも軽く、法人はお金と手間がかかるかわりに、役員報酬と会社の利益に分けて考えられ、会社名で取引できます。私は個人事業主を経由せず、副業から直接合同会社を作りました。どちらが合うかは、もうけの大きさと、続ける見込みで考えるのがおすすめです。
- 個人事業主は「個人」で、法人ではない。法人は登記で成立する別の「人」
- 所得税は5〜45%の累進、法人税は中小法人なら15%/23.2%の2段階
- 法人は赤字でも均等割がかかり、社長ひとりでも社会保険の強制適用
- 法人は役員報酬と会社の利益に分けて考えられる(役員報酬は原則毎月同額)
- 始める・やめる手間とコストは個人事業主のほうが軽い
- 副業から個人事業主を経ずに、直接法人を作ることもできる

