ひとり社長・マイクロ法人の社会保険料はいくら?加入義務、最低等級の保険料、手続き、注意点
ひとり社長の会社(マイクロ法人)でも、役員報酬を払っていれば社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は義務です。日本年金機構は、法人の事業所を「事業主のみの場合を含む」強制適用事業所としています。
保険料は「標準報酬月額×保険料率」で決まり、会社と本人で半分ずつ負担します。2026年度の東京都の協会けんぽの料率で計算すると、40〜64歳なら会社+本人の合計で報酬のおよそ30%、いちばん低い等級でも月2万円台になります。この記事では、加入義務、料率、役員報酬別の早見表、手続き、マイクロ法人で気をつけたい点を整理します。

振り返ると、社会保険の手続きは難しく考えすぎていました。不完全でもまず年金事務所に連絡すれば、相談に乗ってもらえます。この記事では、これから会社を作る人が「結局いくらかかるのか」をつかめるように、公式の料率で計算した表を載せます。

ひとり社長でも社会保険は強制加入
個人事業主は、従業員が常時5人以上いる一部の業種などを除いて、社会保険の強制適用ではありません。一方、法人は社長ひとりでも強制適用事業所です。そして、その会社から報酬を受け取る社長は被保険者になります。
厚生労働省が2026年3月に出した通知でも、法人から労務の対償として報酬を受けている役員は被保険者とするのが基本と整理されています。被保険者になるかどうかは、業務が経営に参画する経常的な労務の提供か、報酬がその対価として経常的に払われているか、という実態で判断されます。
| 状況 | 社会保険(健康保険・厚生年金) | ポイント |
|---|---|---|
| 法人を作り、役員報酬を払う | 加入(強制) | 社長ひとりでも会社は強制適用事業所。社長は被保険者 |
| 法人を作ったが、役員報酬は0円 | 被保険者の要件である「報酬」がない状態 | 厚労省の通知は「報酬を受けている役員」を被保険者としている。扱いは年金事務所に確認 |
| 個人事業主(従業員なし) | 加入しない(国民健康保険・国民年金) | 常時5人以上の一部業種などを除き、強制適用ではない |
| 会社員のまま自分の会社からも報酬を受ける | 両方で被保険者(二以上事業所勤務) | 年金事務所に「二以上事業所勤務届」を出す |
| 70歳以上 | 厚生年金の被保険者は70歳未満 | 年齢によって扱いが変わるので年金事務所に確認 |
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」(2026年10月1日更新)、厚生労働省保険局保険課長・年金局事業管理課長通知「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」(令和8年3月18日)(2026年10月時点)
役員報酬を0円にした場合の税金や手取りの比較は役員報酬ゼロ・低額・中額の試算例にまとめています。会社員と兼業する場合の手続きは二以上事業所勤務届の手続きで詳しく書いています。
2026年度の保険料率(協会けんぽ・東京都)
ひとり社長の会社の多くは、健康保険は協会けんぽに加入します。協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに違い、毎年度見直されます。2026年度は、2026年4月分から新しく子ども・子育て支援金が加わりました。
| 項目 | 料率(会社+本人の合計) | 適用 | 負担 |
|---|---|---|---|
| 健康保険料(東京都) | 9.85% | 令和8年3月分(4月納付分)から | 会社と本人で折半 |
| 介護保険料(40〜64歳のみ) | 1.62% | 令和8年3月分から | 会社と本人で折半 |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 令和8年4月分(5月納付分)から | 会社と本人で折半 |
| 厚生年金保険料 | 18.3%(固定) | 平成29年9月分から | 会社と本人で折半 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 令和8年4月1日から | 会社が全額負担 |
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度保険料率」、日本年金機構「厚生年金保険料額表」「標準報酬月額・標準賞与額とは?」(2026年10月時点)。健康保険料率は都道府県ごとに異なります
40〜64歳の場合、健康保険9.85%+介護1.62%+支援金0.23%+厚生年金18.3%で、ちょうど30.0%になります(東京都の場合)。これに会社だけが払う子ども・子育て拠出金0.36%が加わります。
役員報酬別の社会保険料早見表(最低等級から)
上の料率で、役員報酬(月額)ごとの保険料を計算しました。標準報酬月額は、実際の報酬を一定の幅で区切った等級に当てはめた額です。健康保険は1等級が58,000円、厚生年金は1等級が88,000円なので、報酬がとても低くても最低でもこの等級の保険料がかかります。
| 役員報酬(月額) | 標準報酬月額(健保/厚年) | 合計・40歳未満(うち本人) | 合計・40〜64歳(うち本人) |
|---|---|---|---|
| 5万円(最低等級) | 58,000円/88,000円 | 21,950円(10,975円) | 22,890円(11,445円) |
| 10万円 | 98,000円/98,000円 | 27,812円(13,906円) | 29,400円(14,700円) |
| 15万円 | 150,000円/150,000円 | 42,570円(21,285円) | 45,000円(22,500円) |
| 20万円 | 200,000円/200,000円 | 56,760円(28,380円) | 60,000円(30,000円) |
| 30万円 | 300,000円/300,000円 | 85,140円(42,570円) | 90,000円(45,000円) |
| 60万円 | 590,000円/590,000円 | 167,442円(83,721円) | 177,000円(88,500円) |
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度保険料率」、日本年金機構「厚生年金保険料額表」「標準報酬月額・標準賞与額とは?」(2026年10月時点)。東京都・協会けんぽの料率(健康保険9.85%、介護1.62%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%)で筆者が計算。合計は1円未満を四捨五入、本人分は折半額の1円未満を切り捨て。会社が全額負担する子ども・子育て拠出金(0.36%)は含みません。実際の天引き額の端数処理は保険料額表の注記にしたがいます
たとえば役員報酬が月5万円でも、40〜64歳なら会社と本人を合わせて月22,890円(年間で約27万円)かかります。報酬に対する割合で見ると、低い報酬ほど負担が重く見える点に注意してください。
- 健康保険料率は都道府県ごとに違う。東京都以外の会社は、協会けんぽのその県の保険料額表で確認する
- 料率は毎年度見直される(2026年度の健康保険料率は3月分から適用)。最新の保険料額表を必ず確認する
- 標準報酬月額は、報酬の幅(例:146,000円以上155,000円未満→150,000円)で決まる。15万円ちょうどでなくても同じ等級になることがある
- 協会けんぽではなく健康保険組合に入る場合は、料率が違う
国民健康保険・国民年金と比べるときの考え方
法人を作る前(個人事業主や副業の段階)は、国民健康保険と国民年金に入るのが一般的です。法人の社会保険と比べるときは、金額だけでなくしくみの違いも見ておくと判断しやすくなります。
✅ 会社と本人で折半(会社負担分も会社のお金)
✅ 厚生年金は国民年金(基礎年金)に上乗せ
✅ 家族を被扶養者にできる場合がある
📌 国民健康保険料は市区町村ごとに計算方法・金額が違う
📌 会社負担はなく、全額自分で払う
📌 年金は基礎年金のみ(上乗せは任意の制度)
出典:日本年金機構「国民年金保険料の金額は、どのようにして決まるのですか?」(令和8年度 月額17,920円)、日本年金機構「標準報酬月額・標準賞与額とは?」(2026年10月時点)
比べるときは、「会社負担分+本人負担分」の合計と、国保+国民年金の合計を並べるのがわかりやすいです。会社負担分は会社の経費になりますが、ひとり社長にとっては結局どちらも自分の会社のお金だからです。国民健康保険料は前年の所得などをもとに市区町村が計算するので、正確な比較にはお住まいの市区町村の試算が必要です。
会社を作ったら何をする?社会保険の手続き
会社を設立して役員報酬を払うことになったら、年金事務所(事務センター)に次の届出をします。
会社が適用事業所になったことを届け出ます。期限は事実発生から5日以内。法人の場合は、提出日からさかのぼって90日以内に発行された登記簿謄本(原本)を添付します(コピー不可)。あわせて法人番号指定通知書のコピー(または国税庁法人番号公表サイトの画面を印刷したもの)も必要です。
社長(役員)を被保険者として届け出ます。被保険者になった日から5日以内が期限です。
配偶者や子どもを健康保険の被扶養者にする場合に出します。要件は協会けんぽ・年金事務所で確認してください。
会社の健康保険に入ったら、それまでの国民健康保険は市区町村で脱退の手続きをします。会社員から独立した人は退職時の社会保険の切り替えも参考にしてください。
出典:日本年金機構「新規適用の手続き」(2026年7月13日更新)、「適用事業所と被保険者」(2026年10月1日更新)(2026年10月時点)
提出方法は、電子申請・郵送・窓口のいずれかです。実際に事業をしている場所が登記上の住所と違う場合は、賃貸借契約書など事業所の所在地がわかる書類が必要になります。バーチャルオフィスを本店にしている場合などは、事前に年金事務所に確認しておくと安心です。
なお、社会保険の手続きを代わりに行う(申請代行)のは社会保険労務士の仕事です。自分で出すか、社労士と連携している税理士事務所に相談するかを決めておきましょう。
会社員のまま自分の会社から報酬を受ける場合
会社員として社会保険に入ったまま、自分の会社からも役員報酬を受け取ると、2つの事業所で被保険者になります。この場合、本人が年金事務所に「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を出し、両方の報酬を合算した額で保険料が決まり、それぞれの会社の報酬額に応じて按分されます。
私も1期目はこの手続きをしました。勤め先の会社には何も依頼せず、年金事務所で手続きしています。流れや注意点は二以上事業所勤務届の手続きに詳しく書きました。
マイクロ法人で保険料を抑える仕組みと注意点
「マイクロ法人を作ると社会保険料が安くなる」という話を目にすることがあります。仕組みとしては、社会保険料が会社から受け取る報酬の標準報酬月額で決まることがベースになっています。役員報酬を低めに決めれば、保険料も低い等級で決まります。
ただし、次の点に注意が必要です。
- 実態が必要:厚労省の令和8年3月の通知は、役員としての業務が経営に参画する経常的な労務の提供か、報酬がその対価として経常的に払われているかを実態で判断するとしています。保険料を下げる目的だけで役員になる形は認められにくくなっています
- 給付も報酬に連動:厚生年金の年金額は標準報酬月額をもとに計算されます。保険料を抑えると、将来の厚生年金も少なくなります
- 会社に利益が残れば法人税:報酬を低くした分、会社の利益が増えれば法人税等がかかります。税金と保険料はセットで試算する
- 個人事業と組み合わせる場合:個人事業と法人の「二刀流」は、事業の切り分けや税務の論点が別にあります(マイクロ法人と個人事業の二刀流)
出典:厚生労働省通知「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」(令和8年3月18日)、日本年金機構「標準報酬月額・標準賞与額とは?」(2026年10月時点)
役員報酬の金額は、保険料だけで決めるものではありません。生活費、法人税、所得税・住民税を合わせて考える必要があるので、顧問税理士と試算してから決めるのがおすすめです。決め方の全体像は役員報酬の決め方を見てください。
よくある質問
まとめ
ひとり社長の会社でも、役員報酬を払えば社会保険への加入は義務です。保険料は役員報酬の標準報酬月額で決まり、2026年度の東京都の料率なら40〜64歳で報酬のおよそ30%(会社+本人)。最低等級でも月2万円台かかります。手続きは5日以内が期限なので、設立前に流れを確認しておきましょう。
- 法人は社長ひとりでも強制適用。報酬を受け取る社長は被保険者
- 2026年度(東京都):健康保険9.85%、介護1.62%、子ども・子育て支援金0.23%、厚生年金18.3%(いずれも折半)
- 最低等級でも会社+本人で月21,950円(40歳未満)/月22,890円(40〜64歳)
- 新規適用届・資格取得届は5日以内。法人は登記簿謄本(90日以内・原本)を添付
- マイクロ法人は実態が前提。保険料を抑えれば将来の厚生年金も少なくなる

