会社員のまま法人を作って退職すると失業保険(基本手当)はもらえない?役員のまま辞めるときの考え方

法人を作って退職すると失業保険はもらえない?
gou
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📢 本記事は、会社員のまま合同会社を設立して独立したひとり社長・ゴウが、厚生労働省・ハローワークの公開資料をもとに書いています。内容は2026年10月時点のものです。基本手当を受けられるかどうかはハローワークが個別に判断します。必ず住所地を管轄するハローワークに確認してください(役員報酬や税金は顧問税理士に)。

会社員のまま法人を作って、そのあと会社を辞める。このとき気になるのが「失業保険(雇用保険の基本手当)はもらえるのか」です。

結論から言うと、ハローワークは基本手当を受けられない人の例として「自営業(準備を含みます。)をしている方」「会社など法人の取締役に就任している方」を挙げています。自分の会社の役員のまま退職し、その会社で仕事を続けるなら、基本手当は受けられない前提で準備するのが安全です。そのうえで、事業をしている期間を受給期間に数えない「事業開始の受給期間特例」(2022年7月〜)や、要件を満たした場合の再就職手当という仕組みがあります。

ゴウ
ゴウ
私は会社員のまま合同会社を作り、設立の7か月後に退職しました。退職の翌月からは、自分の会社でSESの案件に入っています。
この記事では、同じように「会社を作ってから辞める」人が基本手当をどう考えればいいかを、厚生労働省とハローワークの資料で確認できた範囲で整理します。ネットには「役員でも無報酬なら大丈夫」といった話もありますが、公式資料で確認できなかったことは書いていません。
ゴウ
ゴウ
私自身は、退職するときに基本手当をもらえるとは思っていなかったので、検討すらしていません。ハローワークにも相談していません。結果としてその判断は合っていたのですが、次に書く「受給期間の特例」のことは、当時まったく知りませんでした。

失業保険(基本手当)は「失業の状態」の人のための給付

基本手当は、会社を辞めた人なら誰でももらえるお金ではありません。ハローワークの説明では、就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるのに職業に就けず、積極的に求職活動をしている状態を「失業」としています。

項目内容
失業の状態離職し、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行っている状態
受給資格(原則)離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12か月以上(倒産・解雇等の場合は離職の日以前1年間に6か月以上)
受給期間原則として離職した日の翌日から1年間
待期受給資格決定日から通算7日間は支給されない
自己都合退職の給付制限正当な理由のない自己都合離職は、2025年4月1日以降の離職なら原則1か月(例外あり)

出典:ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」、厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律の施行通知(2026年10月時点で確認)

ポイントは1行目です。基本手当は「仕事を探しているのに、まだ見つからない人」を支える給付です。すでに自分の会社で仕事をしている人は、この「失業の状態」に当たるかどうかが問題になります。

会社の役員に就任している・自営の準備をしている場合の扱い

ハローワークは、基本手当を受けられない人の例を具体的に挙げています。会社員のまま法人を作った人に関係するのは、次の3つです。

ハローワークが挙げる「基本手当を受けられない」例(抜粋)会社を作ってから辞める人との関係
自営業(準備を含みます。)をしている方退職後に自分の会社で事業をする・準備をする場合に関係
会社など法人の取締役に就任している方退職時点で自分の会社の役員になっている場合に関係
就職(見習い、試用期間、研修期間を含み、収入の有無を問いません。)している方—

出典:北海道ハローワーク「基本手当の支給を受けることができる方は」(例示の一部を抜粋)。右列は筆者の整理(2026年10月時点で確認)

会社員のまま法人を作った人は、退職した時点で自分の会社の役員です。そして多くの場合、退職後はその会社で事業を続けます。つまり、上の例にそのまま当てはまりやすい立場です。

「無報酬なら」「活動していなければ」は個別判断

一方で、「役員だけど報酬はゼロ」「会社は作ったが、ほとんど活動していない」といったケースもあります。こうした場合の扱いを一律に示した公式資料は、今回確認できませんでした。ハローワークが実態を見て個別に判断するものと考えて、自己判断はしないでください。

また、ハローワークの例示は「取締役」という言葉です。合同会社の代表社員・業務執行社員がどう扱われるかも、窓口で状況を伝えて確認するのが確実です。

🚫 受けられない例として明示されている
・自営業(準備を含む)をしている
・会社など法人の取締役に就任している
・就職している(収入の有無を問わない)
役員のまま事業を続けるなら原則こちら
🔍 ハローワークが個別に判断する
・役員だが無報酬
・会社がほとんど活動していない
・合同会社の社員(役員)の扱い
・副業程度の収入がある
状況を正直に伝えて相談

役員のまま辞めるときの3つの考え方

「自分の会社の役員のまま退職する」と決まっているなら、考え方は大きく3つに分かれます。どれが使えるかは事業の状況と時期しだいなので、ここでは全体像だけつかんでください。

役員のまま退職するときの選択肢
🏢
A:事業に専念する
基本手当は受けない前提。受給期間の特例で「権利」を持ち越せる
›
💴
B:再就職手当を確認
事業開始の要件に当たるか、ハローワークで確認
›
🔍
C:就職活動をする
会社の状況を伝え、失業の状態かどうか個別に判断を受ける
A と B は両方は使えません(再就職手当を受けた事業は、受給期間の特例の対象外)

会社員のうちに法人を作り、退職後すぐに自分の会社で仕事を始める人は、多くがAに当たると思います。Aの場合に知っておきたいのが、次の「事業開始の受給期間特例」です。

起業した人の「受給期間の特例」(2022年7月〜)

2022年7月1日から、離職後に事業を開始した人などが事業を行っている期間を、最大3年間、受給期間に算入しない特例ができました。

ふつう、基本手当の受給期間は離職日の翌日から原則1年です。事業をしている間もこの1年は進んでいくので、事業がうまくいかずにやめたときには、もう受給期間が残っていない、ということが起こりえます。特例を使うと、事業をしている期間は受給期間の進行が止まり、事業をやめたあとに残りの期間で基本手当を受けられる可能性が残ります。

項目内容
開始時期2022年(令和4年)7月1日から
対象になる人離職後に事業を開始した人/離職前に事業を開始し、離職後にその事業に専念する人/これらに準ずるとハローワーク所長が認めた人(例:開業準備に専念したが開業に至らなかった人)
効果事業を行っている期間等を、最大3年間、受給期間に算入しない
申請期限事業を開始した日(専念し始めた日)の翌日から2か月以内(天災などやむを得ない理由がある場合を除く)
申請先・書類住所地を管轄するハローワークに、受給期間延長等申請書、登記事項証明書など、離職票(または受給資格者証)を提出
対象外事業の実施期間が30日未満/事業開始日から受給期間の末日までが30日未満/その事業で再就職手当・就業手当を受けた/事業により自立できないとハローワーク所長が認めた(例:基本手当を受給しながら事業を始めた)
その後の届出事業を廃止・休止したときは、速やかにハローワークへ届け出る

出典:厚生労働省リーフレット「離職後に事業を開始等した方の受給期間の特例」、東京労働局「受給期間の特例」のページ、ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問」Q10(2026年10月時点で確認)

会社員のまま法人を作った人にとって大事なのは、対象者に「離職前に事業を開始し、離職後にその事業に専念する人」が入っていることです。会社員のうちに会社を作って、辞めたあとにその会社の仕事に専念する、という流れはまさにこれに当たりえます。

受給期間の特例のイメージ
🚪
退職
受給期間(原則1年)がスタート
›
🏢
事業に専念
特例を申し出れば、この期間(最大3年)は受給期間に数えない
›
🛑
事業をやめる
ハローワークに届出
›
🔍
求職活動
残りの受給期間で基本手当を受けられる可能性
申出は事業を始めた(専念し始めた)日の翌日から2か月以内。登記事項証明書などが必要です

つまりこの特例は、「今すぐ基本手当をもらう制度」ではなく、事業がうまくいかなかったときのために権利を残しておく制度です。退職後すぐ事業に専念する人ほど、期限(2か月)を意識しておきたいところです。

ゴウ
ゴウ
正直に書くと、私はこの特例を退職したときは知りませんでした。そもそも離職票も受け取っていなかったと思います。知っていれば、前の会社に離職票を出してもらい、登記事項証明書と一緒にハローワークに申し出ておいたと思います。申出に費用はかからず、使わなければそれまでですが、万が一のときに基本手当の権利が残ります。「会社を作ってから辞める」人には、ぜひ知っておいてほしい制度です。

退職前にやっておけばよかったことを一つ挙げるなら、事前に準備できることは前倒しでやっておくことです。辞めたあとから「あれもこれも」とやることが出てくるので、できるものは先に進めておくに越したことはありません。

再就職手当・就業手当の考え方

もうひとつの仕組みが再就職手当です。基本手当の受給資格がある人が早めに就職したり事業を始めたりしたときに、一定の要件を満たせば支給されます。事業を開始した場合の主な要件は次のとおりです。

項目内容(事業を開始した場合)
要件①事業を開始した日(準備期間がある場合は準備を開始した日)の前日までの失業の認定を受けたうえで、支給残日数が所定給付日数の3分の1以上
要件②受給期間内に雇用保険の被保険者となる人を雇い入れて適用事業主となる、または1年を超えて事業を安定的に継続できると認められる
要件③待期が経過した後に事業(準備期間がある場合は準備)を開始した
給付制限がある人待期満了後1か月間に事業を開始したものでないこと
支給額支給残日数が3分の2以上:基本手当日額×支給残日数×70%/3分の1以上:同×60%
就業手当2025年4月1日に廃止

出典:北海道ハローワーク「再就職手当」のページ(このページにない要件もあるとの注記あり)、厚生労働省 雇用保険法等の一部を改正する法律の施行通知(就業手当の廃止)(2026年10月時点で確認)

ここで注意したいのが要件③です。再就職手当は「受給資格の決定を受けて、待期が過ぎたあとに事業を始めた」ことが前提になっています。退職前からすでに法人を作って事業を始めている場合に、この要件をどう当てはめるかは、ハローワークの判断になります。「会社を作ってから辞める人でも、再就職手当がもらえる」と単純には言えないので、必ず事前に相談してください。

また、以前は安定した職業以外に就いた人向けの「就業手当」がありましたが、2025年4月1日に廃止されています。古い記事で就業手当が紹介されていることがあるので気をつけてください。

判断の流れ図:会社を作ってから辞める人の場合

ここまでの内容を、判断の順番に並べ直しました。どこかで迷ったら、その時点でハローワークに相談するのが近道です。

STEP1
退職時点で、自分の会社の役員か?
はい → 「会社など法人の取締役に就任している方」の例に当たりうる。役員の扱い(合同会社の社員を含む)は窓口で確認。
STEP2
退職後、その会社の事業を続ける(準備する)か?
はい → 「自営業(準備を含む)をしている方」の例に当たりうる。基本手当は受けない前提で資金計画を立てる。
STEP3
事業に専念するなら、受給期間の特例を検討
専念し始めた日の翌日から2か月以内に申出。登記事項証明書と離職票などを用意。
STEP4
再就職手当の要件に当たるかを確認
待期経過後の事業開始などの要件がある。特例とは併用できないので、どちらを使うか相談して決める。
STEP5
事業をやめた・休んでいる場合
事業の廃止・休止を届け出たうえで、失業の状態に当たるかを個別に判断してもらう。
🏢 事業を続ける人
・基本手当は受けない前提で準備
・特例の申出(2か月以内)を検討
・生活費は会社の売上と貯蓄で設計
「権利を残す」発想で
🔍 事業をしていない・やめた人
・会社の状況(報酬・活動)を正直に伝える
・失業の状態かどうかは個別判断
・受給中に働いたら必ず申告
自己判断せず窓口へ

相談の順番:退職前に何をどこへ聞くか

雇用保険・社会保険・税金は窓口が別々です。退職前から順番に確認しておくと、退職後にあわてずにすみます。

STEP1
雇用保険の加入期間と離職票を確認
離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あるかを確認。離職票は会社から届くので、受け取ったら保管します。
STEP2
ハローワークに事前相談
「会社員のうちに法人を作り、自分は役員」「退職後はその会社で事業をする予定」など、状況をそのまま伝えます。特例や再就職手当が使えるかもここで確認。
STEP3
期限のある手続きをカレンダーに入れる
受給期間の特例は、事業を始めた(専念し始めた)日の翌日から2か月以内。
STEP4
健康保険・年金の切り替え
自分の会社の社会保険に入るのか、などの手続き。手順は退職時の社保切替にまとめています。
STEP5
役員報酬・税金は税理士に
退職後の自分の給料(役員報酬)をいくらにするかは、会社の売上見込みと生活費から税理士と試算します。
ゴウ
ゴウ
私は退職の翌月から自分の会社で仕事を始めました。退職後の自分の給料(役員報酬)は、税理士と試算して決めています。
設立から退職までの流れは独立の経緯に、設立前に知っておきたい注意点は設立前の3つの罠に書いています。

やってはいけないこと:黙って受給する

「役員だけど言わなければわからない」と考えるのは危険です。受給中に働いたり収入を得たりしたときは、失業認定申告書で申告する決まりになっています。

⚠️ 受給中・受給前に守ること
  • 収入の有無にかかわらず、仕事をした日は失業認定申告書に記入する(内職・手伝いで収入を得たら、その日と額も)
  • 就職したり自営を始めたりしたら、ハローワークに届け出る
  • 不正受給をすると、受け取った額の返還に加えて、悪質な場合は返還額の2倍に相当する額の納付を命じられることがある
  • 「役員だけど無報酬」など迷う状況は、受給前に窓口で確認する

出典:滋賀労働局「失業認定申告書の記入について」のページ、ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問」Q13(2026年10月時点で確認)

よくある質問

Q. 会社員のまま法人を作って退職すると、失業保険はもらえませんか?
A. ハローワークは「会社など法人の取締役に就任している方」「自営業(準備を含む)をしている方」を基本手当を受けられない例に挙げています。役員のまま会社の事業を続けるなら、受けられない前提で準備するのが安全です。最終的な判断はハローワークが行います。
Q. 役員報酬がゼロなら受け取れますか?
A. 無報酬の役員の扱いを一律に示した公式資料は確認できませんでした。会社の活動状況なども含めてハローワークが個別に判断するので、受給前に必ず相談してください。
Q. 開業届を出していると失業保険はもらえませんか?
A. ハローワークは「自営業(準備を含む)をしている方」を受けられない例に挙げています。開業届を出している場合は、その事業をどうしているか(続けているか・やめたか)を窓口で伝えて判断を受けてください。
Q. 副業をしていた人が退職した場合はどうなりますか?
A. 退職後も副業を続けるなら、その内容によっては自営業に当たったり、失業認定申告書での申告が必要になったりします。収入の有無にかかわらず、仕事をした日は申告書に記入する決まりです。
Q. 起業した人の受給期間の特例は、いつまでに申し出ればいいですか?
A. 事業を開始した日(専念し始めた日)の翌日から2か月以内です。事業をしている期間を最大3年間、受給期間に算入しない特例で、2022年7月1日から始まっています。

まとめ

会社員のまま法人を作って退職する場合、基本手当は「もらえるかどうか」より先に、自分が「失業の状態」に当たるのかを考える必要があります。役員のまま自分の会社で事業を続けるなら、受けられない前提で準備し、事業がうまくいかなかったときのために受給期間の特例を検討する、という順番がおすすめです。

📝 この記事のまとめ
  • 基本手当は、就職の意思と能力があり求職活動をしても就職できない「失業の状態」の人のための給付
  • ハローワークは「法人の取締役に就任している方」「自営業(準備を含む)をしている方」を受けられない例に挙げている
  • 無報酬・活動なし・合同会社の社員の扱いなどはハローワークが個別に判断
  • 起業した人の受給期間の特例(2022年7月〜)で、事業期間を最大3年受給期間に算入しない。申出は2か月以内
  • 再就職手当(事業開始)は待期経過後の開始などが要件。就業手当は2025年4月1日に廃止
  • 退職前にハローワークへ状況を正直に伝えて相談。役員報酬は税理士と
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副業から合同会社を設立して4年目のひとり社長/エンジニア
本業を持ちながら副業(口コミサイトと受託開発)を12年育て、本業と並行して合同会社を設立。その後、法人に一本化しました。いまはSESを本業に、自社Webサービスと口コミサイトを運営しています。立ち上げ前に自分が不安だったこと・迷ったことを、実際にどうだったかと一緒に書いています。
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