会社員のまま自分の会社から役員報酬をもらう人の確定申告|給与2か所の合算、乙欄でも追加納付になる理由、住民税はどちらから引かれるか
会社員のまま自分の合同会社を作り、役員報酬を受け取り始めると、給与が2か所になります。本業の会社で年末調整を受けていても、自分の会社からの役員報酬が年20万円を超えれば確定申告が必要です。この記事では、本業600万円・役員報酬180万円(月15万円)の例で、2か所の給与をどう合算するか、なぜ「追加で納める」ことが多いのか、住民税はどちらの会社から引かれるのかを整理します。

結論:役員報酬が年20万円を超えたら確定申告
毎月の源泉は甲欄
年末調整を受ける
毎月の源泉は乙欄(甲欄より高め)
年末調整はしない(源泉徴収票は作る)
従たる給与+給与以外の所得が20万円超なら必須
翌年2月中旬〜3月15日
所得税法では、2か所以上から給与を受けていて、年末調整されなかった給与(自分の会社の役員報酬)と、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える人は確定申告が必要です(国税庁タックスアンサーNo.1900)。役員報酬を月15万円にしていれば年180万円なので、確定申告は必ず必要になります。
- 所得税の確定申告は不要でも、住民税は2か所の給与の合計に課税されます
- 自分の会社が市区町村に給与支払報告書を出していれば、住民税の申告は別に要りません(出し忘れると住民税の申告漏れになります)
- 医療費控除やふるさと納税(6自治体以上)で確定申告をするなら、そのときは役員報酬も含めて申告します
自分の会社の源泉徴収は「乙欄」
毎月の給与から引く所得税は、扶養控除等申告書を出している会社では甲欄、それ以外の会社では乙欄で計算します。扶養控除等申告書は1か所にしか出せないので、本業に出している会社員は、自分の会社の役員報酬を乙欄で源泉徴収します。
| 社会保険料等控除後の月額 | 甲欄(扶養0人) | 乙欄 |
|---|---|---|
| 125,000円以上 127,000円未満 | 1,190円 | 4,700円 |
| 127,000円以上 129,000円未満 | 1,300円 | 5,000円 |
| 129,000円以上 131,000円未満 | 1,400円 | 5,300円 |
| 105,000円未満 | 0円 | その金額の3.063% |
出典:国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表(給与所得の源泉徴収税額表・月額表)」から抜粋。2027年1月の給与からは改正後の税額表に変わります。
月15万円の役員報酬から社会保険料(二以上事業所勤務で按分された分)を約2.2万円引くと約12.8万円なので、乙欄で月5,000円・年6万円ほどが天引きされます(社会保険料は仮定)。乙欄は甲欄より高めですが、それでも確定申告で追加納付になることが多い点に注意が必要です。理由は次の試算のとおりです。
試算:本業600万円+役員報酬180万円
2か所の給与は、確定申告で収入を合算してから給与所得控除を1回だけ引きます。それぞれの会社で別々に控除が引かれるわけではありません。さらに令和8年分は、合計所得によって基礎控除の額が変わるため、合算すると基礎控除が小さくなることがあります。
| 項目 | 本業だけの場合 | 2か所を合算した場合 |
|---|---|---|
| 給与収入 | 600万円 | 780万円(600万+180万) |
| 給与所得控除 | 164万円(600万×20%+44万) | 188万円(780万×10%+110万) |
| 給与所得(=合計所得) | 436万円 | 592万円 |
| 基礎控除(令和8年分) | 104万円(489万円以下) | 67万円(489万円超655万円以下) |
| 社会保険料控除(仮定) | 90万円 | 117万円(本業90万+自社27万) |
| 課税所得 | 242万円 | 408万円 |
| 所得税(復興特別所得税込み) | 約14.8万円 | 約39.7万円 |
※社会保険料の額、他の控除がないことは仮定です。給与所得控除・基礎控除は国税庁タックスアンサーNo.1410・No.1199(令和8年分)。所得税は速算表で計算し、2.1%の復興特別所得税を加えています。
- 収入は180万円増えたのに、給与所得控除は24万円しか増えず、基礎控除は37万円減るので、課税所得は166万円増えます
- 税率も5%・10%の帯から20%の帯に上がり、年税額は約14.8万円 → 約39.7万円(約25万円増)
- 本業の年末調整で約14.8万円、自分の会社の乙欄で約6万円が引かれているので、確定申告で約19万円を追加で納める計算になります
- 本業の年末調整で、基礎控除申告書の「合計所得の見積額」に役員報酬を含めて書いていれば、そのぶん追加納付は小さくなります
「乙欄で多めに引かれているから還付になるはず」と思っていると、3月に慌てることになります。役員報酬を決めるときは、確定申告での追加納付も見込んでおくのが安全です。役員報酬の決め方は役員報酬の記事とゼロ・低額・中額の試算例で詳しく書いています。
確定申告でやること
自分の会社も「給与を払った会社」なので、自分宛ての源泉徴収票を作ります。あわせて市区町村に給与支払報告書を出します(2027年は2月1日まで)。2027年1月からは、給与支払報告書を出せば税務署への源泉徴収票の提出は不要になります(みなし提出)
本業と自分の会社の「支払金額」「源泉徴収税額」「社会保険料等の金額」をそれぞれ足して申告書に書きます。二以上事業所勤務届を出していれば、社会保険料は両方の源泉徴収票に載っています
ふるさと納税(寄附金控除)、iDeCoの掛金、医療費控除などを入力します。ワンストップ特例を申請していても、確定申告をすると特例は無効になるので、寄附金控除を必ず書きます
令和8年分の申告・納付の期限は2027年3月15日(月)。受付は例年2月16日からで、e-Taxなら自宅から出せます。振替納税にすると引き落としは4月中旬以降になります
住民税はどちらの会社から引かれる?
確定申告の内容は市区町村に回り、翌年度の住民税が計算されます。給与所得にかかる住民税は、原則として給与から天引きする特別徴収で、給与が2か所あるときは、主たる勤務先(本業の会社)がまとめて天引きするのが一般的な扱いです(京都府「従業員向けQ&A」)。確定申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選べるのは、事業所得や雑所得など給与以外の所得の分で、給与の分は選べないとする自治体が増えています(東京都中央区は令和9年度から、すべての給与を合算して主たる事業者から特別徴収すると案内)。
つまり、自分の会社の役員報酬の分も、本業の会社が天引きする住民税の額に含まれる可能性が高いということです。本業の就業規則で副業や他社の役員になることがどう扱われているかは、設立前に確認しておくのが基本です(就業規則で確認する3か所、会社に伝わる4つの経路)。

役員報酬の分の住民税は、私の場合は自分で納付(普通徴収)になりました。扱いは自治体によって変わるので、気になる人は申告の前に市区町村の住民税の窓口に確認しておくと安心です。
使える控除・使えない控除
| 控除 | 会社員兼業のひとり社長の場合 |
|---|---|
| ふるさと納税 | 確定申告をするのでワンストップ特例は使えない。寄附金控除として申告する。上限は2か所の給与の合計で決まる(ふるさと納税の記事) |
| iDeCo | 会社員としての上限が適用される。2026年12月から会社員の上限は月6.2万円(企業年金の掛金を差し引いた額)に引き上げ(iDeCoの記事) |
| 小規模企業共済 | 中小機構は「事業を兼業している給与所得者(法人などと常時雇用関係にある方)」を加入できない人に挙げています。会社員として給与をもらいながら兼業している間は加入できない扱いなので、退職後に加入するのが順番です(小規模企業共済の記事) |
| 医療費控除 | 2か所の合計所得で足切り額を判定(この例では10万円) |
よくある質問:自分の会社の年末調整・提出物はどうする?
よくあるミス
- 自分の会社の源泉徴収票を作っていない:申告に入れ忘れると、あとから追徴の対象になります
- 自分の会社が給与支払報告書を出していない:役員1人の会社でも出す義務があります。出し忘れると住民税が正しく計算されません
- ワンストップ特例を出したから大丈夫と思い、寄附金控除を書き忘れる:確定申告をすると特例は無効です
- 乙欄で多めに引かれているから還付と思い込む:合算で税率と基礎控除が変わり、追加納付になることが多いです
- 役員報酬ゼロなら関係ないと思う:役員報酬ゼロなら給与は1か所なので確定申告の理由にはなりませんが、会社の決算と法人住民税の均等割は別にかかります
- 会社員が自分の合同会社から役員報酬をもらうときの「二以上事業所勤務届」
- 役員報酬はいくらにする?会社員兼業ひとり社長のゼロ・低額・高額
- 役員報酬ゼロ・低額・中額の試算例
- 会社員の副業、確定申告はいくらから?
- 会社員のまま合同会社を作ると会社にバレる?
- ひとり社長の年末調整と1月の提出物
- ひとり社長のふるさと納税
- 会社員のまま法人を作って退職すると失業保険(基本手当)はもらえない?役員のまま辞めるときの考え方
- ひとり合同会社で家族は役員(社員)にする?従業員にする?
- 会社役員のふるさと納税|役員賞与・配当がある人の上限とワンストップが使えない場合
- ひとり合同会社の剰余金配当(利益の配当)|やり方・決定書・税金
- ひとり社長の源泉所得税|納期の特例で年2回にする方法と納付の手順
まとめ
- 本業で年末調整、自分の会社は乙欄で源泉徴収。役員報酬が年20万円を超えたら確定申告が必要
- 確定申告では2か所の給与を合算して給与所得控除を1回。令和8年分は合算で基礎控除が下がることもある
- 本業600万円+役員報酬180万円の試算では、確定申告で約19万円の追加納付(仮定あり)。役員報酬を決めるときに見込んでおく
- 住民税の給与分は、原則として本業の会社からまとめて特別徴収
- ワンストップ特例は無効になるので、ふるさと納税は寄附金控除として申告。期限は2027年3月15日(月)

