ひとり合同会社の経費はどこまで落ちる?|自宅の家賃は役員社宅、飲食は1人1万円、PCは40万円未満の特例、経費にならないもの一覧
ひとり法人になると「これは経費になりますか?」を自分で判断する場面が毎日あります。基本は「事業のために使ったと説明できるか」の一点ですが、自宅の家賃、スマホ、PC、飲食代など、線引きに迷うものは決まっています。この記事では、IT系のひとり法人でよく出る費目を、国税庁のルールに沿って「経費になる/条件つき/ならない」に分けます。


費目別:経費になる・条件つき・ならない
| 費目 | 判定 | ルール・ポイント |
|---|---|---|
| 税理士費用・会計ソフト・バーチャルオフィス | 🟢 経費 | 事業の固定費。全額 |
| PC・モニター・ソフト(10万円未満) | 🟢 経費 | 消耗品費で全額 |
| PC等(10万円以上30万円未満) | 🟡 条件つき | 青色申告の中小法人なら「少額減価償却資産の特例」で取得した期に全額(年300万円まで、別表添付)。2026年4月1日以降の取得なら40万円未満まで対象(令和8年度改正) |
| スマホ・回線 | 🟡 按分 | 事業用と私用を使用実態で按分。法人契約で事業専用にすれば全額 |
| 自宅の家賃・光熱費 | 🟡 仕組み次第 | 個人契約のままだと法人の経費にしにくい。法人が借りて役員に貸す「役員社宅」にすると、役員負担分(賃貸料相当額)以外を法人の経費にできる |
| 取引先との飲食 | 🟢 経費(交際費) | 中小法人は年800万円まで損金。1人1万円以下(2024年4月〜)の飲食は書類を残せば会議費扱いで交際費の枠外 |
| 書籍・セミナー・資格 | 🟢 経費 | 業務に関係するもの。趣味性の強いものは否認されやすい |
| 出張の交通費・宿泊費・日当 | 🟡 規程があれば | 「出張旅費規程」を作れば、社会通念上相当な日当は非課税で経費。規程なしの日当は給与扱い |
| 社長のスーツ・私服 | 🔴 経費にならない | 私生活でも着られる衣服は否認例が多い |
| 家族旅行・私的な飲食 | 🔴 経費にならない | 「視察」「研修」の名目で入れると否認+役員賞与認定のリスク |
| 社長の私的支出を法人が払った | 🔴 役員貸付金 | 経費ではなく「会社が社長に貸した」扱い。認定利息の問題も |
※判定は一般的な整理です。個別の支出は税理士に確認してください。
いちばん差が出る「自宅」の扱い
個人事業主なら家賃を床面積で按分して経費にできますが、法人は違います。社長個人が契約している家賃を、法人の経費にはできません。法人で経費にするには、次のどちらかにします。
✅ 家賃の大半を法人の経費にできる
✅ 社長は「賃貸料相当額」だけ負担(小規模住宅なら固定資産税の課税標準額から計算。実務上は家賃の1〜2割程度になることが多い)
⚠️ 大家の協力・固定資産税の課税標準額の確認が必要
✅ 法人側は地代家賃で経費
⚠️ 社長個人に不動産所得が発生し、確定申告が必要
⚠️ 按分の根拠(面積・使用時間)をメモで残す
- 法人が家賃を全額払って、社長から賃貸料相当額を徴収していない → 差額が役員への給与(現物給与)と認定される
- 賃貸料相当額を「家賃の50%」で決めている → 役員の場合は国税庁の算式(小規模住宅は固定資産税の課税標準額ベース)が原則。50%は「会社が借り上げた小規模でない住宅」の基準
- 光熱費・通信費も同じ按分率で自動的に経費にしている → 明確な算式はなく、実態に応じた根拠が必要
本店の場所の考え方は「ひとり合同会社の本店は自宅かバーチャルオフィスか」にまとめています。

飲食代:1人1万円以下なら会議費
2024年4月以降の支出から、取引先との飲食は1人あたり1万円以下なら、日付・相手の氏名と関係・人数・金額・店名を残しておけば交際費ではなく会議費として全額経費にできます(それまでは5,000円)。1万円を超えると交際費ですが、中小法人は年800万円まで損金なので、ひとり法人で上限に当たることはまずありません。
- 日付・店名(レシートに印字されていればOK)
- 同席した相手の氏名と会社名、自分との関係(取引先/候補先など)
- 人数と1人あたりの金額
- 社内だけの飲食(自分ひとり、家族)は対象外。ひとり法人の「自分ひとりの食事」は経費にならない
PC・機材:30万円未満の特例を使う
IT系のひとり法人はPCやモニターの買い替えが多いので、中小企業者等の少額減価償却資産の特例を覚えておくと便利です。青色申告の中小法人が取得価額30万円未満の資産を買った場合、事業年度に合計300万円まで、取得した期に全額を損金にできます(申告書に明細の別表を添付)。10万円未満ならこの特例を使うまでもなく消耗品費です。
この特例は2026年度(令和8年度)税制改正で適用期限が3年延長され、対象の取得価額も40万円未満に拡充されています。取得した時期で条件が変わるので、高い機材を買う前に税理士に確認しておくと安心です。
出張旅費規程で「日当」を経費にする
ひとり法人でも「出張旅費規程」を作れば、出張のときに日当を社長に払えます。社会通念上相当な範囲の日当は、受け取る社長側は非課税、法人側は経費(消費税も課税仕入れ)です。金額の絶対基準は決まっていないので、役員報酬の水準や同業の相場と釣り合う額にします。規程がないまま日当を払うと給与扱いになります。
経費にならないものを法人で払ったらどうなるか
私的な支出を法人カードや法人口座で払ってしまったら、経費に入れず「役員貸付金」として処理します。会社が社長にお金を貸した状態なので、利息(認定利息)を付けて返す必要があり、放置すると税務調査で役員賞与と認定されたり、金融機関の融資審査で「資金が私的に流用されている」と見られたりします。詳しくは「法人と個人のお金の分け方」へ。
まとめ
- 経費の基準は「事業のために使ったと説明できるか」。迷う支出は記録を残して税理士に確認
- 自宅は個人契約のままだと法人の経費にできない。役員社宅か事務所使用料のどちらかにする
- 飲食は1人1万円以下(2024年4月〜)なら会議費。相手・人数・金額のメモを残す
- PC・機材は10万円未満は消耗品費、30万円未満(2026年4月以降の取得は40万円未満)は特例で全額損金(年300万円まで、要件あり)
- 出張旅費規程で日当を非課税に。私的支出は経費ではなく役員貸付金

