経営セーフティ共済はひとり合同会社に必要?掛金が全額損金になる仕組みと2024年10月改正の注意点
小規模企業共済が「個人の所得控除」なら、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は「法人の経費(損金)」になる積立です。ひとり合同会社で利益が出はじめたときに、税理士から最初に提案されることが多い制度です。

経営セーフティ共済とは
本来の目的は、取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったときに、無担保・無保証人で借入ができる「連鎖倒産防止」の制度です。ただ実務上は、掛金が全額損金になり、40か月以上積み立てれば解約時に100%戻ってくるという性質から、法人の利益を将来に繰り延べる手段として広く使われています。
💴
月5,000〜20万円
5,000円単位
🏦
総額800万円まで
積立の上限
🧾
全額損金
法人の経費になる
🔁
40か月で100%
解約時に全額戻る
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金 | 月5,000円〜200,000円(5,000円単位) |
| 積立上限 | 総額800万円 |
| 税務上の扱い | 法人は全額損金算入(個人事業は必要経費) |
| 解約手当金 | 納付40か月以上で掛金の100%。12か月以上40か月未満は80%〜100%未満。12か月未満は0 |
| 借入 | 取引先倒産時、掛金総額の10倍(上限8,000万円)まで無担保・無保証人 |
📅 納付月数と戻り率(任意解約)
🚫
12か月未満
戻りなし(0%)
📉
12〜39か月
80%〜100%未満
✅
40か月以上
100%戻る
2024年10月の改正で「解約→再加入」が使いにくくなった
以前は「利益が出た年に積んで、赤字の年に解約して戻し、また加入する」という使い方ができました。しかし2024年10月1日以降に解約した場合、解約から2年間は再加入しても掛金を損金に算入できなくなりました。中小機構の調査で、再加入者の7割以上が解約後1年未満に再加入していたことが背景です。
解約手当金を受け取る。この時点で全額が益金になる
加入自体はできる。ただし…
この期間に払った掛金は経費にならない
ここからの掛金は損金算入できる

小規模企業共済との違い
✅ 個人の所得控除
✅ 月1,000〜7万円
✅ 受取は退職所得等(税負担が軽い)
✅ 法人の損金
✅ 月5,000〜20万円(総額800万円まで)
⚠️ 解約手当金は全額が益金
| 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済 | |
|---|---|---|
| 誰の制度 | 経営者「個人」 | 法人(または個人事業) |
| 税務上の効果 | 個人の所得控除 | 法人の損金 |
| 掛金 | 月1,000〜7万円 | 月5,000〜20万円(総額800万円まで) |
| 受け取るとき | 退職所得等(税負担が軽い) | 全額が益金(法人の収入) |
| 向いている目的 | 経営者の退職金 | 法人の利益の繰り延べ・緊急時の借入 |
| 併用 | 可能 | 可能 |
ひとり合同会社で入る意味があるのはどんなとき
- 利益が安定して出はじめた:損金にする意味があるのは利益があるとき。赤字の年に積んでも効果は薄い
- 数年後に大きな支出の予定がある:自分への退職金、設備投資、事業転換の資金など
- キャッシュに余裕がある:40か月は続ける前提なので、月々の掛金が資金繰りを圧迫しない額にする
逆に、設立したばかりで売上が読めない時期に入る必要はありません。私も加入したのは利益が見えた2期目です。最初の1年は法人口座と会計の仕組みを整えることに集中して、共済は利益が見えてから、という順番で十分です。
解約手当金は「収入」になる点に注意
その期の利益が減る
その期の利益が増える
掛金は損金になりますが、解約手当金を受け取ると、その全額がその期の益金(収入)になります。利益が出ている年に解約すると、そのぶん法人税がかかります。なので、解約のタイミングは「自分に退職金を払う年」「大きな赤字が出た年」など、益金と相殺できる年に合わせるのが基本です。ここは税理士と決算の見通しを見ながら決める部分です。
- 経営セーフティ共済の解約手当金は法人の収入(益金)になるので、個人の退職所得控除の話(10年ルール)とは別の世界です。法人側で受け取る年に役員退職金を出して相殺する、という設計がよく使われます
- 個人側の小規模企業共済・iDeCo・役員退職金は、受け取る順番と間隔(iDeCo一時金→退職金は10年、逆は20年)で退職所得控除の使える額が変わります。3つの受け取り計画は「小規模企業共済は合同会社の役員も入れる?」の「受け取るときの順番」の節へ
- 小規模企業共済は2026年12月末で現金納付が終了し、2027年1月から口座振替に統一されます(中小機構)。こちらは掛金の払い方の話で、経営セーフティ共済とは別の手続きです
申込みはどこでするか
申込みは中小機構と業務委託契約を結んでいる金融機関(銀行・信用金庫など)や商工会議所の窓口で行います。掛金の引き落とし口座も、この委託金融機関の口座に限られます。GMOあおぞらやPayPay銀行などのネット銀行は原則使えません。
経営セーフティ共済の掛金はネット銀行から引き落とせないので、法人口座の記事も合わせて読んでください。掛金の仕訳は会計ソフトに任せるのが楽です(私はfreee、定番はマネーフォワードも)。
まとめ
- 経営セーフティ共済は法人の掛金が全額損金になる積立(月5,000円〜20万円、上限800万円)
- 40か月以上で解約時100%戻るが、解約手当金は益金になる
- 2024年10月以降は解約後2年間、再加入しても損金にできない
- 利益が安定してから、長期で積む前提で検討する


