ひとり社長の年末調整と1月の提出物|自分と妻の給与、令和8年分の改正と2027年からの源泉徴収票「みなし提出」
従業員のいないひとり社長でも、自分の会社から役員報酬をもらっていれば、会社は「給与を払う側」です。12月には自分(と家族)の年末調整、1月には源泉所得税の納付と給与まわりの提出物がやってきます。しかも令和8年分は、基礎控除と給与所得控除が12月1日施行で変わる年で、2027年1月からは源泉徴収票の出し方も変わります。この記事では、ひとり社長が12月〜2月にやることを、自分と妻の2人分を例に整理します。


全体像:ひとり社長の12月〜2月
保険料控除申告書など
12月の給与で精算
7〜12月分をまとめて
法定調書合計表など
| 時期 | やること | ひとり社長のポイント |
|---|---|---|
| 11月〜12月上旬 | 年末調整の書類をそろえる | 自分と妻の扶養控除等申告書(令和8年分の見直し+令和9年分)、基礎控除申告書などの兼用様式、保険料控除申告書 |
| 12月の給与 | 年末調整(年税額の計算と過不足の精算) | 令和8年分は12月1日施行の改正後の控除で計算する |
| 2027年1月20日(水) | 源泉所得税の納付(納期の特例) | 7月〜12月分の6か月分をまとめて納付 |
| 2027年2月1日(月) | 給与支払報告書(市区町村) | 自分と妻の全員分を提出 |
| 2027年2月1日(月) | 源泉徴収票・法定調書合計表(税務署) | 2027年1月から源泉徴収票は「みなし提出」。税理士報酬の支払調書などがあれば合計表を出す |
| 2027年2月1日(月) | 償却資産申告書(市区町村・都税事務所) | パソコンなど事業用の資産がある場合 |
| 2027年1月の最初の給与まで | 令和9年分の扶養控除等申告書を受け取る | 提出がないと翌月から乙欄(高い税額)になる |
※1月31日・1月末が期限のものは、2027年は1月31日が日曜日のため翌日の2月1日(月)が期限になります(国税通則法10条2項・地方税法20条の5第2項)。
ひとり社長も「自分の会社で」年末調整を受ける
年末調整は、会社が給与から天引きしてきた所得税と、1年の給与で決まる本当の年税額との差を、年末に精算する手続きです。役員(代表社員)も年末調整の対象で、その年の給与収入が2,000万円以下で、会社に扶養控除等申告書を出していれば、自分の会社で年末調整を受けます。ひとり社長の場合は、会社として自分の年末調整をするという、少し不思議な形になります。
✅ 給与収入が2,000万円以下
✅ 扶養控除等申告書を会社に出している
⚠️ 給与以外の所得が20万円を超える
⚠️ 自分の会社から家賃や貸付金の利子を受け取っている
⚠️ 医療費控除・住宅ローン控除1年目など
会社員のまま自分の会社から役員報酬をもらっている人は、本業の会社で年末調整を受け(扶養控除等申告書は本業に出す)、自分の会社の給与は乙欄で源泉徴収して、翌年に確定申告で合算するのが基本です。詳しくは二以上事業所勤務届の記事と副業の確定申告の記事をどうぞ。
令和8年分(2026年分)の年末調整で変わること
令和8年度の税制改正で、所得税の基礎控除と給与所得控除などが引き上げられました。施行は2026年12月1日なので、11月までの毎月の源泉徴収はこれまでどおりで、12月の年末調整で改正後の控除を使って精算します。そのぶん、例年より年末調整での還付が大きくなりやすい年です。
| 項目 | 令和8年分(2026年分) | ひとり社長への影響 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得489万円以下:104万円 489万円超655万円以下:67万円 655万円超2,350万円以下:62万円 | 役員報酬が月60万円(年720万円)なら合計所得は538万円で67万円 |
| 給与所得控除の最低保障 | 65万円 → 74万円 | 家族の給与が少額のとき効く(年136万円までは所得62万円以下) |
| 扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 | 58万円以下 → 62万円以下(給与だけなら年136万円以下) | 妻(家族)に給与を払っている社長は、配偶者控除・扶養控除の判定に使う |
| 配偶者特別控除の対象 | 配偶者の合計所得62万円超133万円以下(給与で136万円超207万円以下) | 社長本人の合計所得が1,000万円以下の場合のみ |
| 特定親族特別控除 | 19歳以上23歳未満の親族の所得62万円超123万円以下(給与で136万円超197万円以下) | 大学生の子がアルバイトで稼いでいる場合 |
出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」、令和8年分の基礎控除申告書等の様式。住民税(令和9年度分)の基礎控除は43万円のままで、所得税とは計算が異なります。
- 令和8年分の申告書は、「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という1枚の兼用様式です。国税庁サイトの令和8年分の様式を使います
- 源泉徴収税額表は2027年1月の給与から改正後の表に変わります。1月の給与計算で古い表を使わないように
- 会計ソフトや給与ソフトは、12月の年末調整までに改正対応版に更新されているか確認します
年末調整でやること(4ステップ)
自分と妻の扶養控除等申告書(令和8年分の内容を見直し、あわせて令和9年分も記入)、基礎控除申告書などの兼用様式、保険料控除申告書を用意します。ひとり社長なら書く人も受け取る人も自分です
生命保険料・地震保険料の控除証明書、国民年金などの社会保険料の証明、小規模企業共済やiDeCoの掛金払込証明書(保険料控除申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に書きます)
1年分の給与と天引きした所得税を源泉徴収簿にまとめ、改正後の控除で年税額を計算します。会計ソフト・給与ソフトの年末調整機能を使うのが現実的です
天引きしすぎていれば還付、足りなければ追加で徴収します。12月の給与に間に合わなければ1月の給与で精算してもかまいません。精算した結果は1月20日(納期の特例)の納付額に反映されます
- ふるさと納税・医療費控除は年末調整では引けません。ふるさと納税は寄附先5自治体以内ならワンストップ特例、医療費控除は確定申告です(詳しくはひとり社長のふるさと納税の記事)
- 住宅ローン控除の1年目は確定申告が必要です(2年目からは年末調整で引けます)
- 自分の会社から家賃(社宅として自宅を貸している)や貸付金の利子を受け取っている同族会社の役員は、金額にかかわらず確定申告が必要です
妻(家族)に給与を払っている場合
妻に月85,000円(年102万円)を払っている私のケースで、毎月の源泉徴収と年末調整、社長側の配偶者控除を確認してみます。
| 確認すること | 妻:月85,000円(年102万円)の場合 |
|---|---|
| 毎月の源泉所得税 | 扶養控除等申告書を出していれば甲欄で0円(令和8年分の月額表は、社会保険料等控除後の金額が105,000円未満なら0円)。出していないと乙欄で3.063%(約2,600円)が毎月かかる |
| 妻の年末調整 | 給与所得は102万円−74万円=28万円。基礎控除104万円の範囲内なので年税額は0円 |
| 社長の配偶者控除 | 妻の合計所得28万円は62万円以下、社長の合計所得(538万円)は900万円以下なので、配偶者控除38万円 |
| 妻の住民税 | 2026年分の所得にかかる令和9年度(2027年度)の非課税ラインは給与収入119万円以下(給与所得控除の引き上げで110万円から変更。非課税限度額が45万円の東京23区などの場合)。102万円なら非課税(自治体で変わるので要確認) |
| 1月の提出物 | 妻の分の給与支払報告書も必要(全員分を出す)。本人用の源泉徴収票も渡す |
※社長の合計所得は、役員報酬年720万円から給与所得控除182万円を引いた538万円で計算。社会保険(健康保険・厚生年金)の加入判定は税金とは別の基準です(妻(家族)に給料を出す記事)。
個人事業の「青色事業専従者給与」と違い、法人から給与をもらっている家族は、条件を満たせば配偶者控除・扶養控除の対象になります。この点は法人化して家族に給与を払うときの小さなメリットです。
1月20日:源泉所得税の納付(納期の特例)
給与から天引きした所得税は、本来は翌月10日までに毎月納めます。ただし給与を払う人が常時10人未満の会社は、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出しておけば、1月〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日にまとめて納められます。ひとり社長ならほぼ必ず対象になります。
- 2027年1月20日は水曜日なので、期限はそのまま1月20日です
- 7月〜12月の6か月分に、12月の年末調整の過不足を反映した額を納めます
- 税理士報酬を個人の税理士に払っている場合、報酬から天引きした源泉所得税(10.21%)も一緒に納めます(税理士法人への支払いは源泉不要)
- 納期の特例は申請した翌月の分から使えます。まだ出していない人は、出すかどうかを税理士と決めておきます
2月1日(月)まで:給与まわりの提出物
1月31日が期限の提出物は、2027年は1月31日が日曜日なので、2月1日(月)までになります。ひとり社長に関係するのは次の4つです。
| 提出物 | 提出先 | ひとり社長の場合 |
|---|---|---|
| 給与支払報告書(総括表+個人別明細書) | 従業員(自分・妻)が住む市区町村 | 全員分を提出。翌年度の住民税(特別徴収)の計算に使われる |
| 給与所得の源泉徴収票 | 税務署 | 役員は年150万円超なら提出が必要だったが、2027年1月1日以後は給与支払報告書を出せば税務署に出したものとみなされる(みなし提出)。本人用は引き続き全員に交付 |
| 法定調書合計表 | 税務署 | 個人の税理士に年5万円超の報酬を払っていれば「報酬、料金…の支払調書」とあわせて提出。給与の源泉徴収票しかない場合の扱いは税理士に確認 |
| 償却資産申告書 | 資産がある市区町村(23区は都税事務所) | パソコンなど事業用の資産があれば申告(課税標準額が150万円未満なら課税されないが、多くの自治体で申告は必要) |
出典:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」「給与所得の源泉徴収票のみなし提出について」、タックスアンサーNo.7411。
源泉徴収票の「みなし提出」は2027年1月から始まる新しい特例で、ひとり社長にはありがたい改正です。給与支払報告書はeLTAX・光ディスク・書面のどれで出してもよく、税務署用の源泉徴収票を別に作って出す手間がなくなります。
ひとり社長がやりがちなミス
- 自分の扶養控除等申告書を出していない:ひとり社長でも、会社(自分)宛てに書いて保管しておかないと年末調整ができず、毎月の源泉も乙欄になります
- 妻の分の給与支払報告書を出し忘れる:住民税がかからない金額でも、給与を払った人は全員分を出します
- 1月20日の納付を忘れる:納期の特例は年2回なので忘れやすく、遅れると不納付加算税・延滞税の対象になります
- 11月までの旧ルールのまま計算する:令和8年分は12月1日施行の改正後の控除で年末調整します
- 令和9年分の扶養控除等申告書を回収し忘れる:2027年最初の給与までに、自分と妻の分を用意します

給与まわりを任せられる税理士がまだいない人へ
年末調整と1月の提出物は、決算(9月決算なら11月30日)と時期が近く、ひとりで全部こなすと負担が大きくなります。給与が自分と家族だけでも、顧問税理士に年末調整と給与支払報告書の提出まで頼めると安心です。
私は税理士ドットコムで候補を比較し、最終的には知人の紹介で契約しました。顧問料は月2万円弱で、決算と申告、役員報酬の試算までお願いしています。
まとめ
- 役員(代表社員)も、自分の会社で年末調整を受ける(会社員兼業なら本業で年末調整し、確定申告で合算)
- 令和8年分は12月1日施行の改正で、基礎控除(所得489万円以下は104万円)と給与所得控除の最低保障(74万円)が上がる。12月の年末調整で反映
- 妻に月85,000円なら、甲欄で源泉0円・年税額0円、社長は配偶者控除38万円
- 1月20日(水):納期の特例で7〜12月分の源泉所得税を納付
- 2月1日(月):給与支払報告書(全員分)、法定調書合計表、償却資産申告書。2027年1月から源泉徴収票は「みなし提出」

