役員報酬ゼロ・低額・中額の試算例|社会保険料は最低等級で下げ止まる、会社員兼業と専業ひとり社長で数字はどう変わるか【2026年度】
役員報酬を「ゼロ」にするか「低額」にするか「それなりの額」にするか。ひとり法人で毎年いちばん悩む決めごとです。別記事「役員報酬はいくらにする?ゼロ・低額・高額の3パターン」では考え方を書いたので、この記事では具体的な数字の例を出して、社会保険料・法人税・所得税がどう動くかを見ていきます。

前提:役員報酬で動く4つの数字
役員報酬を上げると、会社の利益が減って法人税は下がりますが、社会保険料(会社負担+本人負担)と所得税・住民税は上がります。逆に下げると、社会保険料と個人の税金は下がりますが、会社に利益が残って法人税がかかり、お金は会社に留まります。「会社と個人を合わせた手取り」で比べるのが試算の基本です。
2026年度の料率・控除額(試算に使う数字)
| 項目 | 数値(2026年9月時点) | 備考 |
|---|---|---|
| 健康保険料率(協会けんぽ東京) | 9.85%(40〜64歳は介護1.62%上乗せ) | 2026年3月分から。会社と本人で折半 |
| 子ども・子育て支援金率 | 0.23% | 2026年度。健康保険料と一緒に徴収 |
| 厚生年金保険料率 | 18.3% | 固定。会社と本人で折半 |
| 標準報酬月額の最低等級 | 健康保険 58,000円/厚生年金 88,000円 | 報酬が低くてもこの等級分の保険料はかかる |
| 給与所得控除の最低額 | 74万円 | 2026・2027年分(恒久分69万円+特例5万円。2025年分は65万円) |
| 所得税がかからない給与収入の目安 | 年178万円まで | 基礎控除104万円+給与所得控除74万円(2026・2027年分。令和8年度改正) |
| 法人税率(中小法人) | 所得800万円以下 15%/超 23.2% | 住民税・事業税を含む実効税率は約21〜23%(800万円以下) |
| 法人住民税の均等割 | 年7万円 | 赤字でもかかる(資本金1,000万円以下・従業員50人以下) |
※協会けんぽ東京支部・日本年金機構・国税庁の公開情報をもとに作成。都道府県で健康保険料率は異なります。
試算例①:社会保険料は「最低等級」で下げ止まる
役員報酬を月4.5万円にしても月8万円にしても、社会保険料はほとんど変わりません。健康保険の最低等級が58,000円、厚生年金の最低等級が88,000円だからです。会社負担と本人負担を合計した月額の目安は次のとおりです(40歳未満・東京・介護保険なし)。
| 役員報酬(月) | 健康保険+支援金 | 厚生年金 | 社保合計(会社+本人) | 年額 |
|---|---|---|---|---|
| 0円 | — | — | 0円(加入対象外) | 0円 |
| 4.5万円 | 約5,800円(等級58,000円) | 約16,100円(等級88,000円) | 約2.2万円 | 約26万円 |
| 8万円 | 約7,900円(等級78,000円) | 約16,100円(等級88,000円) | 約2.4万円 | 約29万円 |
| 20万円 | 約20,200円 | 約36,600円 | 約5.7万円 | 約68万円 |
| 30万円 | 約30,200円 | 約54,900円 | 約8.5万円 | 約102万円 |
※2026年度の協会けんぽ東京支部の料率で概算。端数処理・介護保険・賞与は考慮していません。実際の等級は日本年金機構の保険料額表で確認してください。
- 報酬ゼロなら社会保険の加入対象外。会社員の兼業で本業の社保があるなら、副業法人側の保険料はゼロにできる
- 報酬を「1円でも」出すと加入対象になり、月4.5万円でも8万円でも年26〜29万円の社保がかかる(会社+本人)
- 報酬を最低等級付近にする意味は「社保を最小にしつつ、会社から個人に少しだけお金を移す」こと。給与所得控除(2026年分は最低74万円)の範囲内なら個人の税金はほぼゼロ
- 報酬20万円を超えたあたりから社保が年70万円近くになり、手取りの伸びが鈍る
試算例②:会社員兼業なら「ゼロ」と「低額」の差
本業で社会保険に入っている会社員が副業法人を持つ場合、役員報酬を出すと二以上事業所勤務の手続きが必要になり、按分された保険料の通知が本業の会社にも届きます。ゼロなら手続き自体が不要です。数字で見ると次のようになります(法人の利益が年300万円の例)。
| 役員報酬ゼロ | 役員報酬 月5万円(年60万円) | |
|---|---|---|
| 法人の課税所得 | 300万円 | 300万−60万−社保会社負担約13万 ≒ 227万円 |
| 法人税等(実効約22%+均等割7万) | 約73万円 | 約57万円 |
| 社会保険料(会社+本人) | 0円 | 約26万円 |
| 個人の所得税・住民税(役員報酬分) | 0円 | 本業の給与と合算されるため増える(給与所得控除は合計で1回) |
| 二以上事業所勤務届 | 不要 | 必要(10日以内) |
| 会社に残るお金(概算) | 約227万円 | 約170万円+個人に約47万円(本人社保控除後) |
※あくまで例。兼業の場合、役員報酬は本業の給与と合算して課税されるので「給与所得控除がもう1回使える」わけではありません。
- 役員報酬は本業の給与と合算して所得税・住民税が計算される。控除は増えない
- 社会保険は二以上事業所勤務届で按分され、按分結果の通知が本業の会社にも届く
- 本業の会社の給与担当が「別の事業所からの報酬がある」ことを知る経路になる(詳しくは会社員のまま合同会社を作ると会社にバレる?)
- 「会社の利益を個人に移したい」だけなら、兼業のうちは報酬ゼロにして、共済や退職金で移す設計も選択肢
試算例③:専業ひとり社長なら「低額」と「中額」の差
本業を辞めてひとり法人だけになると、社会保険は自分の法人で入るしかないので「ゼロ」は現実的ではありません(国民健康保険・国民年金に切り替える手もありますが、保険料と将来の年金額を比べて判断)。ここでは法人の利益(役員報酬を払う前)が年600万円の例で、報酬8万円と30万円を比べます。
| 役員報酬 月8万円(年96万円) | 役員報酬 月30万円(年360万円) | |
|---|---|---|
| 社会保険料(会社+本人) | 約29万円 | 約102万円 |
| 法人の課税所得 | 600−96−会社負担約15万 ≒ 489万円 | 600−360−会社負担約51万 ≒ 189万円 |
| 法人税等(実効約22%+均等割) | 約115万円 | 約49万円 |
| 個人の所得税・住民税 | ほぼ0円(給与収入96万円) | 約20万円(社保控除後) |
| 個人の手取り(報酬−本人社保−税) | 約82万円 | 約290万円 |
| 会社に残るお金 | 約374万円 | 約140万円 |
| 会社+個人の合計 | 約456万円 | 約430万円 |
※概算の例。合計では低額報酬が有利に見えますが、会社に残ったお金は個人の自由には使えず、将来取り出すときに退職金や配当として課税されます。
✅ 会社にお金が残り、共済・退職金・投資に回せる
⚠️ 個人の生活費が足りなければ意味がない
⚠️ 将来の厚生年金額が少ない
👉 生活費に余裕がある人、会社に貯めたい人
✅ 厚生年金・傷病手当金など保障が厚くなる
⚠️ 社保が年100万円前後になる
👉 生活費を会社から出したい人、保障を重視する人
試算のときに必ず入れる項目
- 3パターン以上(ゼロ/最低等級/中額)で、社保・法人税等・所得税住民税・手取り合計を並べてもらう
- 社会保険料の会社負担を法人の損金に入れて計算してもらう(忘れると法人税が過大に出る)
- 均等割7万円と、利益800万円超で税率が上がる点
- 小規模企業共済・経営セーフティ共済・iDeCoの掛金をどこから出すか(個人か会社か)
- 期首3か月以内に決める(定期同額給与のルール)。期中に変えると損金にならない
- 兼業なら本業の給与と合算した個人の税額と、二以上事業所勤務の要否
決めるタイミングと手続きは「役員報酬はいくらにする?」の「期首3か月ルール」の項を参照してください。

- 役員報酬はいくらにする?ゼロ・低額・高額の3パターン
- 会社員のまま合同会社を作ると会社にバレる?
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まとめ
- 社会保険料は最低等級(健保58,000円・厚年88,000円)で下げ止まる。月4.5万円でも8万円でも年26〜29万円
- 報酬ゼロなら社保の加入対象外。会社員兼業なら副業法人側の社保はゼロにでき、二以上事業所勤務届も不要
- 兼業で低額報酬にしても、給与所得控除は本業と合算で1回。控除が増えるわけではない
- 専業なら「低額で会社に残す」か「中額で個人に移す」か。合計だけでなく生活費と保障で決める
- 期首3か月以内に、税理士に3パターン以上の試算を頼んでから決める

