ひとり社長の源泉所得税|納期の特例で年2回(7/10・1/20)にする方法、納付書の書き方、e-Tax・ペイジー納付の手順と「0円でも提出」【2026年版】
ひとり社長になると、自分の役員報酬から所得税を天引きして、会社として国に納める仕事が毎月ついてきます。これが源泉所得税の納付です。期限は原則「翌月10日」。ただし給与を払う人が常時10人未満の会社は、納期の特例を申請すると年2回(7月10日・1月20日)にまとめられます。
この記事では、源泉所得税の仕組み、役員報酬15万円・60万円のときの税額の目安、納期の特例の申請方法と「いつから適用されるか」、新設法人に納付書が届く仕組み、所得税徴収高計算書(納付書)の各欄の意味、e-Taxでの5つの納付方法とペイジー納付の手順、遅れたときのペナルティまで、設立4年目の私の運用(税理士が申告→自分でペイジー納付)を交えて整理します。

まず結論:ひとり社長の源泉所得税は「毎月」か「年2回」の二択
毎月同じ作業の繰り返し。1回の金額は小さい
税理士が毎月送信してくれるなら手間はほぼ増えない
給与を払う人が常時10人未満なら申請できる(ひとり社長はほぼ該当)
1月は年末調整の精算と重なり、一度に払う額が大きくなる
| 期限 | 2026〜2027年の実際の日付 |
|---|---|
| 毎月納付 | 支給月の翌月10日。土日祝なら翌営業日 |
| 特例:1〜6月分 | 2026年7月10日(金)/2027年7月10日は土曜なので7月12日(月) |
| 特例:7〜12月分 | 2027年1月20日(水) |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」
源泉所得税の仕組みをひとり社長向けに整理
役員報酬から天引きして、会社が納める
会社員のときは会社が勝手にやってくれていた「給料からの所得税の天引き」を、今度は自分の会社がやります。役員報酬も給与所得なので、支払うときに所得税(復興特別所得税を含む)を源泉徴収し、会社が国に納めます。天引きした税額は源泉徴収税額表(月額表)で決まり、「社会保険料控除後の金額」と「扶養親族等の数」で引きます。
税額はいくら? 役員報酬15万円・60万円の目安
| 役員報酬(月) | 社会保険料控除後(概算) | 扶養親族等 0人 | 扶養親族等 1人 |
|---|---|---|---|
| 15万円 | 約12.7〜12.8万円 | 1,300円 | 0円 |
| 60万円 | 約51.1〜51.7万円 | 約29,700〜30,600円 | 約23,200〜24,200円 |
令和8年分 源泉徴収税額表(月額表)甲欄で引いた目安。社会保険料の本人負担は協会けんぽ(東京)と厚生年金の料率で試算した概算で、年齢(介護保険料)や都道府県で数千円ずれます。出典:国税庁 令和8年分 源泉徴収税額表(月額表)
- 甲欄で税額が0円になるラインが、扶養親族等0人で「105,000円未満」に(令和7年分までは88,000円未満)
- 妻への給料が月85,000円なら、扶養控除等申告書を会社に出してもらっていれば源泉徴収税額は0円
- 令和9年分の税額表もすでに公表されている。2027年1月以降の給与は令和9年分の表で引く
会社員のまま役員報酬をもらっている間は「乙欄」
本業の会社に扶養控除等申告書を出している人は、自分の会社では申告書を出せないので乙欄で源泉徴収します。乙欄は甲欄より高く引かれ、確定申告で精算する形です。私も会社員時代の月15万円は乙欄でした(会社員のまま役員報酬をもらう人の確定申告、二以上事業所勤務届)。
納期の特例で年2回にする方法
条件と対象
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件 | 給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者。ひとり社長(+家族従業員)なら該当 |
| 対象になる税額 | 給与・退職金から源泉徴収した税額、税理士・司法書士など一定の士業報酬から源泉徴収した税額 |
| 対象にならない税額 | 原稿料・デザイン料など、上記以外の報酬から源泉徴収した税額(毎月納付のまま) |
| 申請書 | 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を給与支払事務所等の所在地の所轄税務署へ。提出時期の定めなし、手数料なし、e-Taxでも提出可 |
| 承認 | 却下の通知がなければ、提出した月の翌月末日に承認されたものとみなされる |
| 適用開始 | 申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分から |
出典:タックスアンサー No.2505、国税庁「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
「いつから適用?」を国税庁の例で図解
毎月納付 vs 納期の特例
| 比べる点 | 毎月納付 | 納期の特例(年2回) |
|---|---|---|
| 納付の回数 | 年12回 | 年2回 |
| 1回の金額(月60万円・扶養1人の例) | 約2.4万円 | 約14万円(6か月分)+1月は年末調整の精算 |
| 資金繰り | 毎月少額で平準化 | 半年分を会社に置いておく必要がある |
| 忘れるリスク | 毎月のルーティンになる | 回数が少ない分、期限を忘れやすい |
| 1月の事務 | 通常どおり | 年末調整・法定調書・給与支払報告書と重なって集中する |
| 向いている人 | 税理士が毎月送信してくれる人、残高管理を細かくしたい人 | 自分で計算書を作る人、事務を半年に1回にまとめたい人 |

1月20日は年末調整の精算と重なる
特例を使うと、1月20日の納付には7〜12月分の税額に加えて年末調整の不足額・超過額の精算が入ります。同じ1月には法定調書合計表・給与支払報告書(2月1日)・償却資産申告もあり、ひとり社長の1月はもともと事務が多い月です(ひとり社長の年末調整と1月の提出物、年末にやることチェックリスト)。
新設法人に「納付書」が届く仕組み
役員報酬を払う会社は「給与支払事務所」なので、設立後に所轄税務署へ提出。私は設立後に契約した税理士に他の届出と一緒に出してもらいました(設立後の届出一覧と期限)
徴収高計算書に書く「整理番号」は税務署から通知されるもの。この番号で納付が管理される
例年、年末調整の時期に翌年分がまとめて郵送されてくる。e-Taxで送信するなら「送付不要」を選ぶこともできる
- 様式がA4単票式に:2026年9月下旬以降、税務署で配付する納付書が複写式からA4単票式に変更。手元の複写式は2028年9月ごろまで使える予定
- 事前送付の取りやめ:原則として2029年(令和11年)の年末調整の時期から、法人税・消費税をキャッシュレス納付している法人には納付書が送られなくなる(国税庁 2026年10月8日付お知らせ)。e-Taxで納めていれば実務上は困らない
- 控えに収受印が押されない:2025年1月から、紙で提出した控えに税務署の収受日付印は押されない。提出日は自分で記録する
出典:国税庁 タックスアンサー No.2110「給与支払事務所等の開設届出書」、国税庁「源泉徴収のしかた 令和8年版」第14節
所得税徴収高計算書(納付書)の書き方
紙でもe-Taxでも項目は同じです。納期の特例の承認を受けている会社は「納期特例分」、それ以外は「一般分」の様式を使います。
| 欄 | 何を書くか | ひとり社長の注意点 |
|---|---|---|
| 年度 | 会計年度(4月1日〜翌年3月31日)。令和8年4月〜令和9年3月の納付は「08」 | 暦年ではないので、1〜3月の納付は前の年度番号になる |
| 税務署名・税務署番号・整理番号 | 所轄税務署と、税務署から通知された整理番号 | 整理番号を間違えると別の会社の納付になる。届いた納付書の印字を使う |
| 納期等の区分 | 一般分:給与を支払った年月/特例分:対象期間(例:令和8年1月〜6月) | 「納付する月」ではなく「支払った月」 |
| 支給年月日 | 一般分:支払日/特例分:最初と最後の支払日 | 役員報酬の支給日を固定しておくと迷わない |
| 人員 | 一般分:その月に給与を払った人数/特例分:各月の人数の合計(延べ人数) | ひとり社長+妻で6か月なら特例分は「12」 |
| 支給額 | 社会保険料を引く前の給与の総額(役員報酬+従業員給与) | 手取りではなく額面 |
| 税額 | 源泉徴収した所得税・復興特別所得税の合計 | 0円なら「0」と書いて提出 |
| 年末調整による不足税額・超過税額 | 12月(または1月)の年末調整で精算した額 | 従業員の還付があればここに |
| 本税・合計額 | 税額の合計。合計額の頭に「¥」を枠内に必ず書く | OCRで読むので黒ボールペン、折らない・汚さない |
| 摘要 | 補足事項 | 年末調整の還付の内訳など、必要なときだけ |
出典:国税庁「源泉徴収のしかた 令和8年版」第14節 所得税徴収高計算書の記載
税額が0円でも提出する
役員報酬を低く設定していて源泉徴収税額が0円の月でも、「納付する税額がない場合であっても、所得税徴収高計算書を所轄の税務署に提出する必要があります」と国税庁の案内に明記されています。紙なら税額0円で提出、e-Taxなら「納付税額0円」のデータを送信します。出さないと「納付がない」と「提出がない」の区別がつかず、税務署から問い合わせが来ることがあります。
出典:国税庁「源泉徴収のしかた 令和8年版」第14節、タックスアンサー No.2110
e-Taxでの納付方法5つの比較
| 方法 | 手数料 | 事前準備 | 上限 | ひとり社長向けの評価 |
|---|---|---|---|---|
| インターネットバンキング(ペイジー) | なし | ネットバンキングの契約(ペイジー対応の金融機関) | なし | 私はこれ。税理士の送信→自分で納付の流れに合う |
| ダイレクト納付 | なし | 利用届出書(法人は書面で約1か月) | なし | 一度登録すれば口座引落。「自動ダイレクト」なら法定納期限当日に自動で引落され、忘れ防止になる |
| クレジットカード | 1万円ごとに99円(税込) | e-Taxから手続 | 1回1,000万円未満 | ポイント目的なら。領収証書は出ない |
| スマホアプリ納付 | なし | アプリ残高のチャージ | 30万円以下 | 少額なら可。領収証書は出ない |
| コンビニ納付(QRコード) | なし | — | 30万円以下 | 源泉所得税(徴収高計算書)は対象外 |
| 金融機関・税務署の窓口 | なし | 紙の納付書 | なし | 昔ながらの方法。e-Taxで送信するなら不要 |
出典:国税庁「国税の納付手続」、同「クレジットカード納付の手続」、同「コンビニ納付(QRコード)」
ペイジー納付の手順(税理士が送信→自分で払う場合)
税理士が代理送信する場合でも、電子納税の納付情報は納税者本人(会社)のメッセージボックスに格納される(e-Tax FAQ)。だから「税理士が送信、社長が納付」が成り立つ
法人の利用者識別番号と暗証番号でログイン。受信通知に納付区分番号(10桁)が表示される。有効期間は格納日から2か月
対応金融機関なら受信通知の「インターネットバンキング」ボタンから遷移して入力を省略できる
収納機関番号 00200(国税庁)/納付番号=利用者識別番号/確認番号=納税用確認番号/納付区分=納付区分番号
納付後に納付完了の通知が格納される。領収証書は発行されないので、この通知と銀行の明細が記録になる

出典:e-Tax「インターネットバンキング等による電子納税」、e-Tax よくある質問「税理士が代理送信した場合の電子納税」
納付が遅れたらどうなる?
| ペナルティ | 内容 | 2026年(令和8年)の数字 |
|---|---|---|
| 不納付加算税 | 期限後に納めた場合に課される。税務署から納税の告知を受ける前に自主的に納めれば軽減 | 原則10%、自主納付なら5%。5,000円未満は切り捨て |
| 不納付加算税の不適用 | 法定納期限から1か月以内に納付し、かつ直前1年間に期限後納付がなければ課されない | 「うっかり数日遅れ」は初回なら救済される仕組み |
| 延滞税 | 納期限の翌日から納付日までの日数で計算 | 2か月以内 年2.8%、2か月超 年9.1%(令和7年は2.4%/8.7%) |
不納付加算税は国税通則法67条・119条4項、「税法を知らなかった・誤解していた」は正当な理由に当たらない(国税庁 法令解釈通達)。出典:国税庁「延滞税の割合」
- 徴収高計算書を期限内に送信しても、納付が期限後なら加算税・延滞税の対象になる(国税庁「年末調整のしかた」に明記)
- 忘れるのが心配なら、法定納期限当日に自動で引き落とす自動ダイレクトを検討する
- 納付区分番号の有効期間は2か月。切れたら再送信が必要
よくある質問
まとめ
源泉所得税は、ひとり社長になった瞬間から毎月ついてくる小さな仕事です。毎月10日に納めるか、納期の特例で7月10日・1月20日の年2回にまとめるか。どちらでも税額が0円の月も計算書は提出すること、送信しただけでは納付にならないこと、この2つだけ押さえておけば大きな失敗はありません。
- 原則は支給月の翌月10日。常時10人未満なら納期の特例で7/10・1/20の年2回に(2027年1月20日は水曜)
- 特例は申請書を出した月の翌月分から適用。出した月の分は翌月10日に通常納付
- 令和8年分の税額表では、扶養0人の甲欄0円ラインが105,000円未満に。妻の給料85,000円は0円
- 税額0円でも徴収高計算書は提出する(国税庁が明記)
- 納付書は年末調整の時期に翌年分が届く。2029年の年末調整時期からキャッシュレス納付の法人には送られなくなる
- ペイジー納付は収納機関番号00200+利用者識別番号+確認番号+納付区分番号。税理士が送信しても納付情報は本人に届くので、社長が自分で払える
- 遅れると不納付加算税10%(自主納付5%)+延滞税2.8%/9.1%(2026年)。1か月以内かつ初回なら加算税は不適用

