合同会社の設立前に就業規則で確認する3か所|会社員の副業禁止・役員就任・届出の出し方
会社員のまま合同会社を作るとき、登記や口座より先に確認すべきなのが勤務先の就業規則です。「副業禁止」と書いてあっても一律に無効とは限らず、逆に「副業OK」でも「他社の役員に就任すること」は別扱いのことがあります。この記事では、就業規則のどこを読むか、副業禁止規定はどこまで有効か、届出・許可制のときに何をどう出すか、を整理します。

結論:合同会社の設立前に就業規則で読むのは「副業・兼業」「役員就任・二重就職」「競業避止」の3か所
副業禁止規定はどこまで有効か
勤務時間外の時間をどう使うかは本来、本人の自由です。そのため就業規則で副業を全面禁止していても、裁判では「会社が制限できるのは一定の場合に限る」という考え方が一般的で、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定、2022年7月改定)も同じ4類型を示しています。
| 会社が副業を制限できる4類型 | 具体例 | ひとり法人でありがちなケース |
|---|---|---|
| ① 労務提供上の支障 | 長時間の副業で本業の遅刻・欠勤・パフォーマンス低下 | 平日夜・休日の受託が本業に食い込む |
| ② 業務上の秘密の漏洩 | 本業の顧客情報・技術情報を副業で使う | 本業のコードや資料を流用する |
| ③ 競業による利益侵害 | 本業と同じ市場で同じ顧客に営業する | 本業の顧客と直接契約する(前職の顧客でも、許可なく引き継ぐと問題になりうる) |
| ④ 名誉・信用の毀損 | 違法・不適切な副業で会社の評判を落とす | — |
※厚生労働省ガイドラインおよび労働法の一般的な解説をもとに整理。
裏を返すと、この4つに当たらない副業を「全面禁止」で処分するのは、会社側にとってもリスクがあるということです。ただし「処分が無効になるか」と「会社との関係が悪くならないか」は別の話なので、規定がある以上は手続きを踏むのが現実的です。
「副業OK」でも「役員就任」は別条文
見落としやすいのが、副業の条項とは別に「他の会社の役員に就任するときは許可を得ること」「二重就職の禁止」といった条文があるケースです。合同会社を作って代表社員になることは、多くの就業規則で「営利企業の役員への就任」に当たります。副業が届出制でも、役員就任は許可制、という会社もあります。
✅ 出せば原則OK
👉 法人設立も「事業内容」として届け出る。役員就任の条文も確認
⚠️ 競業や労働時間で不許可になることがある
👉 登記の前に申請する。不許可なら設立を見送るか、内容を変える
⚠️ ただし関係悪化・処分のリスクは残る
👉 人事に相談して例外の余地を探るか、転職・独立のタイミングと合わせる
届出・申請に書くこと
- 副業の形態:雇用(アルバイト)か、業務委託か、自営(法人の役員)か
- 事業内容:本業と競合しないことが分かる書き方(例:「Web開発の受託」)
- 稼働時間:平日夜・週末、週の合計時間。本業に支障がないことを示す
- 報酬の有無:役員報酬ゼロなら「報酬なし」。出すなら社会保険の二以上事業所勤務も関係する
- 本業の情報・資産を使わないことの誓約
- 会社によっては法人の登記事項証明書や定款の写しを求められる
法人を作るときの「順番」
副業・兼業/役員就任・二重就職/競業避止。人事のポータルや入社時の書類に載っている
本業の顧客・技術・資料を使わない。同じ市場なら競業に当たらないか慎重に
許可制なら許可が出てから登記。届出制でも「設立後に出す」より「設立前に出す」ほうが心証がよい
報酬ゼロなら二以上事業所勤務の手続きは不要。出すなら本業の会社に年金事務所から通知が届く(二以上事業所勤務届の記事)
給与以外の所得分は「自分で納付(普通徴収)」を選べる。給与所得(役員報酬)は原則合算で特別徴収
住民税は「手続き」として整理する
副業の所得があると、翌年の住民税が増えます。確定申告書の「住民税に関する事項」で、給与以外の所得(事業所得・雑所得など)にかかる分を「自分で納付」にすれば、その分の納付書は自宅に届きます。ただし役員報酬は給与所得なので、原則として本業の給与と合算して特別徴収され、この選択の対象になりません。「役員報酬を出すなら、住民税の面でも本業の会社に伝わる前提で設計する」と覚えておけば十分です(自治体によって運用が異なります)。
- 本業の顧客に、会社を通さず直接営業する(競業・信用毀損)
- 本業の資料・コード・アカウントを副業で使う(秘密漏洩)
- 本業の就業時間中に副業の作業や連絡をする(職務専念義務)
- 届出・申請が必要なのに黙って登記する(発覚したときの処分理由になる)
- 「知られなければいい」で設計する。役員報酬・社会保険・住民税の仕組み上、伝わる経路は複数ある
伝わる経路そのものは「会社員のまま合同会社を作ると会社にバレる?伝わる4つの経路」で整理しています。

まとめ
- 就業規則は「副業・兼業」「役員就任・二重就職」「競業避止」の3か所を読む。代表社員になることは役員就任に当たる
- 副業禁止規定は一律有効ではなく、会社が制限できるのは労務提供の支障・秘密漏洩・競業・信用毀損の4類型(厚労省ガイドライン)
- 届出制・許可制なら登記の前に出す。事業内容を本業と切り分けて説明する
- 役員報酬を出すと社会保険(二以上事業所勤務)と住民税の経路で本業に伝わる前提で設計する
- 本業の顧客・資料・時間を使わない。黙って登記しない

